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「今年の ”おめでとう祭り” は 2月18日なんだって!」
3年B組の教室で誰かが言ったその言葉を聞いて、康子の顔は一気に青ざめた。その日は康子の18歳の誕生日だったからである。
康子が暮らす案山子村には、室町時代から続く言い伝えがあった。
それは「村全体が1年間に享受する幸福の量は決まっており、その総量を超えた場合、村に災が訪れる」というもの。
要するに、村人に幸せな出来事が起こり過ぎてしまうと村が不幸になる、ということだ。
そのため案山子村では、幸福の量がオーバーするのを避けるために「おめでとう祭り」と呼ばれる祭事が行われていた。
それは、一年間に起こる幸福の量を調整するために、敢えて人の手によって不幸な出来事を起こし、幸福を不幸で相殺するという神事である。
その為、おめでとう祭りの当日は多くの村人が誰かを不幸にするために躍起になっており、そのターゲットになるのは、その日祝い事がある者であった。
例えば、その日試験の合格発表があった者、子供が産まれた者、誕生日を迎えた者は ”幸福を不幸で相殺する” という大義名分の元に「おめでとう」という言葉を掛けられながら、殴る蹴るの暴行を加えられたり、家を燃やされたりしていた。おめでとう祭り当日に祝い事がある者は、どんなことをされても甘んじて受け入れなければならなかったのである。
そして、今年のおめでとう祭りは2月18日。康子の誕生日なのである。
それを知ったクラスメイトは康子に同情した、そして同時にサディスティックな気持ちも芽生えていた。クラスのマドンナ的存在であり、何をするにも目立っていた康子に対し、クラスメイトは様々な感情を抱いていたからである。
「2月18日になったら、あいつに何しても良いんだな」と呟く男子もいた。
康子は戦々恐々としながら、その日を待つことになる。
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