おめでとう祭

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そして迎えた ”おめでとう祭り” 当日。 時計の針が0時を指し2月18日になった瞬間、康子の家の外から怒号が響き渡った。 「おめでとう!!おめでとう!!」 100人以上の村人が家の周りを取り囲み「おめでとう」の大合唱をしていた。それは「おめでとう」という言葉が本来持つポジティブな意味を一切無くした加虐的なシュプレヒコールであった。 驚いた康子が二階の自室の窓から外の様子を覗くと、開戦の合図を告げる法螺貝のように、爆発音を響かせたロケット花火が康子に向かって打ち込まれた。 驚いた康子が尻餅をつくと、フローリングの床から激しい地響きが伝わってきた。それは、物凄い勢いで大勢の人が家の中に入り込んで来ているために起きた振動であった。 一階のリビングに入り込んだ村人は「おめでとう」と叫びながら金属バットを振り回し家屋を破壊し始める。康子の両親は「ありがとうございます」と叫びながら、必死で羽交い締めにして村人の破壊行為を止めようとしていた。 2月18日を迎えてからものの2、3分で康子の家は壊滅的な状態になってしまう。 そして、暴徒化した村人達は、いよいよ二階にいる康子の部屋へと向かった。 先頭を行くのは右手に金属バット、左手にスタンガンを持った、案山子村で最も暴力的な男だった。 「康子ちゃん、おめでとう!」 そう叫びながら、その凶暴な村人が康子の部屋のドアを蹴破った。 すると、康子は床に寝そべり、朗らかな表情を浮かべながら、じーっと天井を仰いでいた。 そんな康子の様子に呆気に取られながらも、村人は康子に向かって金属バットを振り下ろそうとする。そのとき、康子は恍惚の表情を浮かべてこう言った。 「はぁ 私って最高に幸せ」
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