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「……は?」
場は一瞬にして静まり返る。押し掛けた社員たちは、聞き間違えだったのではないかと立花を見た。しかし、それは確かなものだったと知る。
「会社を蝕むガンは、宇和島、そしてその後ろについて回るお前ら全員だ」
「立花さん……冗談きついっすよ」
「それはこちらのセリフだぞ、金城」
立花は、紙の束を取り出し、それを1枚ずつ役員全員に配布した。
「これは昨夜、宇和島と金城が私に差し出してきた、『人事案』なる怪文書です。新社長に宇和島の名前がありますが、『これを私に変えてもよい』と持ち掛けてきました。この後正午に全取引先と媒体社へと一斉メールされるそうです」
その言葉に続くのは、役員たちの怒声である。
「けしからん!」
「なんということだ!」
「ふざけるな! バカにするのも大概にしろ!」
滝のような汗を流し、目をきょろきょろと泳がせる役員たちの姿もある。
「たとえアポロンとの業務提携を実現させ、新たなスタートを切ろうとも、必ず彼らは足を引っ張る。そしてそれに賛同する者たちも同罪だ!」
「……どういうことだ、立花」
沸き起こる感情を押し殺すように宇和島が尋ねる。
その一部始終を弓月は冷静に見つめていた。
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