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「お前、面白いな」
「え?」
なじみの炭酸が口の中でパチパチと音を立ててはじける。強烈だが、練習終わりの身には却って癖になる。横にいる葛城は何とも思っていなさそうだ。社内で似たようなものを飲んでいるからだろうか。彼が普段何を飲んで、何を食べて、何に興味を持っているか。社内の風評を耳にする割によく分かっていない自分がいる。
その割に誰も彼と関わろうとしない。だからこそ言えることもあるのではないか。どこまで言っても一線を超えることはないか。怖いもの見たさの好奇心がうずいた。
「俺もさ、立花に参ってんのよ」
「何が?」
「再建検討会議で、営業ノルマが積み増しされたんだよ」
「ああ。あいつ『もっと頑張れ』的なこと言ってたけど」
「本当にさ、あの製品を押し続けるのはうちだって腑に落ちないんだよ。スペックやら価格やらデザインやら、どれ一つとっても他社に圧倒されてる。これでしわ寄せがくるのは営業だぞ? それでノルマ上げられるとか……」
「営業に責任押し付けるつもりじゃない?」
「だよな!? そうだよな!? あの頑固さが会社の首絞めてるんだって」
溜まっていたことが次々と言葉になって出てくる。さすがにまずいと思い、少しだけトーンを下げて続ける。
「俺はいいと思うけどな、マイルフォン」
「当たり前っすよ。通さない方がおかしい」
「うお、すごい自信。まあでも確かに、実現すればどれだけすごいことか」
追加のカードを入れ、長津田は再びレーンに立つ。痛烈な一打を放ち、ボールが飛んでいく。その様子を眺め、長津田は口を開いた。
「やるか」
葛城の方を向き直す。
「一泡吹かすか、立花に」
「え?」
「マイルフォンだよ。手を組もうぜ! 営業は売上が増えるし、お前は研究を成し遂げられる。ウィンウィンじゃないか」
「まあ……そうですけど」
「まずは生産ルートと資金だな。生産は清水製作所に任せればいいとして……」
「それ、弓月さんにも言われました」
「あそこは得意先も得意先だから。じゃああとは資金と……」
おもむろにスマホを取り出し、電話帳のページをスクロールさせていく。一人の名前が目に留まり、手を止めた。
「俺に任せろ」
同時刻。下北沢の飲み屋を出たばかりの彼のスマホが震え出す。画面に出てきた名に一瞬指が止まったが、観念して耳にあてた。
「……はい、寺林ですが……?」
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