第2部「序章」

2/7

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
『どこにいる?』 『後ろだよ!』 『え?』 『ほら後ろ! マイルフォン持ってるのが私!』 『……あ、いた!』 『マイルフォン持って、全員集合! 華陽マイルフォン、Now on Sale!!』  煌びやかなCMが画面を彩る。今やマイルフォンの人気は加速度的に上昇し、留まるところを知らない。 華陽マイルフォンの開発計画とそれに伴う融資が決定してから1年が経過した。  この間、華陽・アポロン・清水製作所の3社は、双葉銀行の支援を受け、清水製作所を母体とした『株式会社マイル』を設立。社長には旧製作所に引き続き清水康太が就任し、新たな海底資源=マイルのバッテリー生産に特化する形で生まれ変わった。  あらゆる作業が急ピッチで進められ、アポロンの研究力・技術力と、それらをけん引する華陽・葛城の頭脳が上手く交わり、マイルバッテリーの生産体制はたった3ヶ月で構築を完了した。 「マイルフォン本日完売です! 申し訳ありません!」  華陽がマイルフォンを発表した途端、世間の評価は一転する。かつての旧型スマホ『ミニ電話』はすぐにとってかわられ、華陽の株価や業績に極めて大きなプラス作用をもたらした。  マイルの恩恵を受けたのは華陽だけでない。アポロンは、このノウハウを活かし、大型マイル蓄電池の開発に成功。建設中のスマートシティにおける発電設備が完成したことで、計画の見通しが見えた。 「それでは、ボタンを押してください!」  そして1年が経ったこの日、晴れ渡った空の下でスマートシティの竣工式が開催された。多くのメディアや関係者がつめかけ、カメラを向ける。その先にいるのは、アポロンの代表取締役・柊さゆりである。そよ風が彼女の銀髪を揺らす。  司会の呼びかけに応じ、発電設備のスイッチを押す。ほどなくして、傍に置いてあったデジタルサイネージに『WELCOME!!』の文字が点る。会場には割れんばかりの拍手が沸き起こった。華陽の経営陣や清水、そして彼女の側近であるアポロンCFO・後藤史晴も手を叩き祝福を送る。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加