第2部「序章」

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 手短に会話を終え、悠々と長い廊下を歩く。その場に似つかわしくない、壁に寄りかかって薄汚れたスーツに身を包んだ男と会うまでは。 「あれ、お前だろ。立花」  男は、立花の前に立ち、両手をポケットに入れながら不敵な笑みを浮かべる。身分証もかなり年季が入り『宇和島 貴裕』の名前がギリギリ読めるくらいである。 「いいねえ、やるねえ。早速華陽への反撃開始ってわけかい」 「何の用だ、宇和島」 「社長も代わったし、そろそろ動くときかと思ってな。新政権が地盤を固めるには時間がかかる。組織論の常識だろ?」  宇和島はポケットから右手を取り出すと、立花の前に差し出した。 「手を組もうや。俺はこの会社をひっくり返す。お前と意思は同じだ」  立花は彼の手を眺め、それを容赦なく突っぱねた。 「勘違いするなよ、宇和島。私はお前と違うんだ。粗暴なやり方と一緒にされては困る」 「……は?」 「どけ、忙しいんだ」  立花は彼をよけると、そのまま廊下の先へと歩いていく。宇和島は一言叫ぶ。 「お前忘れたわけじゃないだろうなあ!?」  無視する立花。宇和島は軽く舌打ちすると、逆方向へと歩き出した。 「まあいいさ……俺は俺のやり方でやらせてもらうぜ」  エレベーターを待ちながら、立花も呟く。 「お前のやり方で残るのは焼け野原だ」 「せいぜいぬるま湯に浸かってろ」 「私を見くびるな」  エレベーターに乗り込み、振り返ると、遠くこちらを見る宇和島の姿があった。目を合わせ、2人は確かに口を揃える。 「俺が」 「私が」 「「この会社を、ぶっ壊す」」
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