第2部「鳴動」

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第2部「鳴動」

「最近いかが? お忙しい?」 「またまたご冗談を」  喫茶店の隅で、弓月は砂糖を入れたコーヒーをスプーンでくるくると回す。対面に座るさゆりがカヌレを一つフォークで突き刺した。 「御門さんのカラ出張は全部で15回。明らかに確信犯じゃないかしら?」 「だからこそ、処分したんです」 「『異動』は処分にならないんじゃなくって? そこで働いている方に失礼ですわよ」  弓月は黙ったまま、回していたスプーンを口に運び、一度頷く。 「切れ味は相変わらずですね」 「人はそう簡単に変わらないの。ましてそんな人が集う『会社』なら尚更ね」 『では、人に造られた私もまた変わらない、ということになるのでしょうか』  さゆりのスマートウォッチに搭載されたAI『アポロン』が音声を発する。 「なかなか深い思考をする人工知能ですな」 「当たり前じゃない。私が作ったんですもの」 「どう答えてやるんです?」 「そうねえ。『会社と違って、あなたは人じゃない』かしら?」 『学習しておきます』  喫茶店で流れるラジオからは御門の不祥事が延々と流れ続けている。さゆりはフォークで刺したカヌレを口に運び、再び弓月に話しかけた。 「葛城さん、今は何を?」 「マイルフォンの製品管理とスペックの向上に勤しんでますよ」 「へえ」 「それが何か?」 「今度東南アジアのスマートシティ計画に加わるんだけど、手伝ってくれたらなあ、なんて。伝えておいてくださいます?」  カバンを肩にかけ、彼女は席を立つ。 「もう出られるんですか」 「会議なの。その後行くところもあるんでね」 
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