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「懐かしいもん持ってんな」
彼らが顔を上げる。そこにいたのは、間違いなく写真に映った残りの二人だった。後藤の身体は反射的に立ち上がった。
「いやあ、隣で飲んでたら聞きなじみのある声がしたもんでね」
「宇和島さん……! 金城君も……」
「あれえ? 『アポロンの』後藤さんじゃないですかあ?」
「金城。その言い方は止めろ」
「じゃあどう言うのが良いんだろうな。こいつが華陽を捨てたのは事実だろ」
2人を取り囲むように宇和島と金城が座りこむ。彼らの追及に、後藤はただ目線を下に向けるしかなかった。
「彼は華陽など捨ててない」
「あの時から俺はお前らに不信感でいっぱいなんだよ。肝心なこの時にも交わろうとしないしな」
「それはお前たちのやり方が―」
「この際だ。白黒はっきりさせようぜ。俺らが、お前らがどんなつもりでいるのか。目指す先がどこにあるのか。ここのことは最低限覚えているようだしな」
金城はすかさず立花に一枚の紙を差し出す。『株式会社華陽 役員刷新のご案内』と題されたその書面は、翌日に控えた取締役会の日付が記されていた。
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