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第2部「起点」
「ファアアアアア!!」
小さな白球は左に大きく逸れ、隣のホールへと飛び込んでいく。本日4度目である。
「葛城! お前引っ張り過ぎだって!」
「何すか。飛んでるからいいでしょ」
「ルールが違うのよ!!」
長津田の発声が普段より大きいのも無理はない。先ほどから後方2人の温度が下がりきっているからである。
不安はありながら忙しさにかまけてセッティングを葛城に任せたものの、まさか因縁真っただ中の姉妹を合わせるとは予想もしていなかった。無理やり盛り上げようと空回りしつづける合コンの幹事気分である。
長津田が葛城に耳打ちする。
「おい絶対にこの組み合わせ間違いだろ」
「誰でも呼んでいいって言ったの長津田さんじゃないですか」
「ジョーカーを組み合わせることはないでしょって!」
「悪かったわね、ババで」
咄嗟に振り返ると、腕を組んださゆりが不敵な笑みでこちらを見ている。どう見ても目が笑っていない。スマートウォッチの『アポロン』が彼の声を拾い、『ジョーカー』の検索結果を映し出していた。
「そ、そんな自分から言い方悪くしなくても……ねえ、葵さん!」
葵に至っては俯いたまま顔すら合わせない。
「ああやべえ、地獄だ」
エンジン音に気付く。葛城を一人乗せたカートが黙々と坂を下って行った。
「おい、待て葛城! 置いていくな! それは、それは絶対に違うから!」
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