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『おい見ろよ、立花だぜ』
いつもと何かが違っていた。己を見下すような視線は以前から慣れていたが、その日、立花は違和感を抱かざるを得なかった。貼り紙も『口だけ番長』『臆病者』とこれまでにない区分のものである。
ドアを開けた。オフィスの空気はかつてなく重く、冷え切っていた。
『……どうした』
『やられたよ』
とりわけ苛立ちを隠せない宇和島が一枚の紙を彼に見せつける。それは立花が発したとされるチームの『解散宣言』だった。
『……こんなの出した覚えはないぞ!』
『そんなのは分かってるさ。だが、周りは信じ切っている。これじゃ俺たちが何をやろうと無力化されるだけだ』
金城がふと呟く。
『それ相応の人がこれを出したということでしょう
『誰だそいつは』
『分かるでしょうに……御門常務ですよ』
『私もそう思います』
後藤も同調した。
『今の指針を作ったのは御門常務です。権力基盤を固めるなら何だってする。社員にも人事権をちらつかせて手を回してるんでしょうね』
テーブルを叩き、宇和島が飛び上がる。そのままドアノブに手をかける。
『御門の野郎、ぶっ潰してやる』
『宇和島さん、危険ですって!』
『このまま黙っていられるわけねえだろ! 多少暴れてでも!』
『待った!』
彼らを束ねる者として、立花は宇和島を制止する。
『俺が行く。俺が話をする』
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