第2部「決心」

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『お待ちしておりました』  受付が当然のように2人を通す。待たせた覚えはないが、言われるがまま彼女との面会を迎えた。 『そのバッジ、まだ変わっていないのね』  手帳を閉じると、透き通った瞳がこちらを覗いた。若くして漂うその貫禄に、自然と頭が下がる。 『やはり噂は本当だったんですね……柊、いや大平さゆりさん』  後藤は立花の顔を振り向き、再びさゆりに目を向けた。確かにどこか善十郎の面影を感じ、何より髪色を合わせれば葵にそっくりである。 『いつ華陽の方が来てくれるか、待ってたのよ。だから、そのバッジをつけた人は、顔パスで通させてるの……で、どうするのかしら?』 『はい?』 『どうやって、華陽を壊すの?』  立花に心臓を掴まれたような感覚が走る。 『どうやって、と言いますと……?』 『だって、それでいらしたんでないの? 噂だったら私も聞いているわよ。現場の社員が自発的に集まって無謀にも改革を進めていたって。立花宗之チーフ?』 『無謀って……』  後藤はむっとした。立花が諫める。 『何でもお見通しというわけですか』 『でもわかったでしょ? あの会社で、あいつの下で変えることなんて無駄なことだって』 『……確かにそうです。だからこそ、あなたの言う通り、華陽を壊さないといけない』 『向かうは修羅の道よ?』 『構いません』  さゆりのスマートウォッチが反応し、AIの声が流れ始める。 『横浜での会議まで、あと45分です。最短ルートで約1キロの渋滞発生。早めの移動をお勧めします』 『アポロンって言うの。この子優秀なのよ? 施設を検索すれば混雑状況やメニューの売れ行きまで調べてくれる。人名を検索すれば経歴なんて一瞬よ。あなたの上司が経費を使っていることなんて朝飯前』 『え……?』 『せっかくの機会よ、試してみる? それが済んだら、またいらっしゃいな』  その夜、立花のメールに御門の情報が送られてきた。 『君のことは色々と聞いていたよ。宇和島のことは残念だったな』  場は再び弓月の部屋に戻る。 『本来であればすぐにでもチーム復活、といきたかっただろうが、暴行を起こしたとなっては仕方がない』 『分かっております』 『どうだね』  メガネを直し、立花を見上げる。 『御門がいた椅子に座るつもりはないか』
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