第2部「核心」

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「また消えた……」  ティーグラウンドから葛城の放ったボールは、生い茂る森の中へと消えていった。 「フッ、プレ4の常連だな」  長津田が吹き出す。17番ホールに至るまで、葛城のOB数は10の大台を超えた。当日に至るまで飛ばすことを優先した結果、コントロールが崩壊していた。  後ろから女性の咳払いが聞こえてくる。もう一人の『常連』が銀髪の隙間から鋭い眼光で覗いていた。 「あ、その、すみません……」  相変わらず、妹の葵は一言も話さない。重苦しい空気が続く。  遠くから雷鳴が聞こえ、ゴルフ場中にサイレンが響いた。 『落雷注意報が発令されました。木の近くに立ち止まらず、安全な場所に退避してください……』
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