第2部「核心」

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「お父さんに会った」  さゆりが口を開く。 「私に色々気は遣ってたけどね……結局あんたを褒めて終わるのよ」 「……え?」 「あいつはね、結局あんたが可愛いの。あれだけ弱っても、あんたしか見えてないのよ」  さゆりの体が震え始める。しばらく俯いた後、再び顔を上げた。潤んだ瞳が葵の目に入る。 「お姉ちゃん……?」 「ほんっと、恨めしいわ」  さゆりの手が放れる。常に強さを見せていたさゆりの、それまで見たことのない姿に葵は動揺したが、目を逸らしてはいけないと本能が告げていた。 「この期に及んでそうなのよ、あいつは。私、絶対後悔させてやるの。だからさ、私に手ごたえ感じさせてよ。私以外の奴なんかに倒されるなんて、絶対に許さないから」  雨は弱まり、雲は一瞬の晴れ間を見せる。葵は初めて自分からさゆりの方に体を向けた。微かに震える彼女の手にそっと触れる。
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