第2部「決着」

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『お前、自分の言ってることが分かってるのか』  1時間前。いち早く会議室に入った立花は弓月と対峙していた。 『大平社長体制ではもはや持ちません。今こそ、役員体制を刷新するべきです』  弓月は静かに聞き続ける。 『弓月副社長は役職から離れますが、ここからは顧問として―』 『立花。もういい』  それは怒りではない、全てを察した表情だった。 『お前の狙いを教えろ』 『……隠しても無意味なようですね』  立花は大きく息を吸い、そして背もたれに寄りかかってゆっくりと息をついた。 『試すようなことをしてしまい、申し訳ございません』  立花は全てを話した。 『これから先、一人ずつ同じことを聞いて回り、賛同する役員を炙り出していきます。彼らはいずれ必ず会社を裏切る。根底から覆そうとする宇和島につくのなら尚更。彼らこそが、華陽を腐らせる病です』 『……会議まで席を外しておく。少ないことを祈ろう』  弓月は席を立ち、彼の元から去る。 『立花』  ふと立ち止まり、振り返る。 『お前、まだ許していないか』 『許していませんよ。でもそれくらい愛しています、会社をね』 「信じたくはありませんでしたが、このでたらめな人事案に賛成する役員が一定数おりました」  立花は胸ポケットからマイルフォンを取り出し、録音データの所在を明かした。 「ここに、全てが記録されています」 「おい立花! 話が違うぞ!」 「あなたが用意したシナリオではなかったのですか!?」  先ほどから顔を白くさせている役員が思わず口走る。 「今声を上げた者」  弓月はそれを聞き逃さない。しっかりと目を合わせ、重低音を響かせる。 「君たちが造反者で、よろしいか?」  彼らはそれを聞くや否や次の言葉を失い、俯いた。 「ここには賛同者7人のデータがございます」 「ということは、残りの7人はその人事案なるものに反対ということだね?」 「おっしゃる通り」  弓月は立ち上がり、葵の側に歩を進めた。 「賛成と反対が同数の時は、社長判断で決定を下すのが取締役会での取り決めです。大平社長、ご決断を」  葵は口を真一文字に結んだ。皆が、その言葉を待っている。ただ一人、宇和島を除いては。
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