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「できるわけないよな。そうやって、いつも他人に任せてきたんだろ?」
「宇和島、慎め」
立花の注意すらも無視して続ける。
「あんたら大平家はいつもそうだ。自分の地位にしがみつき、いつまでも逃げ続ける。お前の親父だって散々俺たちを期待させながら、肝心な時には何もしなかった。そんなんが嫌だからよ、俺はここを壊すって決めたんだよ。大平でもアポロンでもない、俺たちの手で新しい華陽を作るんだよ。だから、邪魔者は、役立たずはとっとと消えろって!」
堰を切ったように宇和島は吐き出した。葵は膝の上で拳を握り、体を震わせた。群衆は勝利を確信した。イレギュラーはあったが、就任間もないか弱き社長を揺さぶって逃げさせればすべてが丸く収まる。それを裏打ちするような宇和島の勢い。皆がその結末を予測した。
「……言いたいことは、それだけかしら?」
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