第2部「決着」

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「大変申し訳ございませんでした」  喧噪の去った会議室で、立花は葵と弓月に深々と頭を下げた。 「あのままでは、宇和島達によって、華陽が引き戻せないところまで行ってしまう恐れがありました。彼らを止めるにはこれしかなかったもので」 「分かっています」  葵が返す。 「ですが、アポロンによる買収を望んだのは、本心ですよね?」 「……仰る通りです。違う道を行きましたが、すべての始まりは彼と共にあります」  立花はすべての経緯を二人に話した。 「御門さんを告発したのは、宇和島です。彼はそうやって全てを焼き払おうとした。一方の、私は上に立つことですべてを変えようと考えました。そしてそこには柊さゆり代表が必要だ、とも。大平家の血を受け継ぎながら、自ら殻を破り、世界から注目を集めるあの方なら、もう一度華陽をやり直せる。そう思ったのです」 「私は、役不足だったと?」 「……はい」  今なら、何でも素直に話せると思った。 「ですが、今日のお姿。柊代表と双璧をなす、熱い経営者そのものでした」 「慣れてないから、全然コントロールできていないけど」 「ハハハ……」  無意識に笑う自分がいた。愛想でも嫌味でもない自然な笑いだった。姿勢を正し、彼女に向って彼は告げる。 「アポロンとの交渉を打ち切り、全ての処理が済んだ時点で、この職を辞します」  葵はそれを表情一つ変えず聞き入れた。 「あなたも、いなくなってしまうのね」  『も』という言葉に立花は一瞬の違和感を覚えたが、特段気には留めなかった。 「しかし、まさかアポロンとの交渉打ち切りまでおっしゃるとは」 「当然です。既定路線にする方が間違っているわ」 「あそこまで言われれば、従うしかありません」  立花の表情はいくぶん穏やかなものとなっていた 「ですが、これまで私がプッシュしていたこともあり、先方にどう断りを入れるか、考えるだけでも骨が折れます」 「それなら心配ありません」 「……どういうことでしょう?」  葵は窓の外に目を遣る。大粒の雨がガラスに叩きつけられ、風が吹きすさんでいた。 「葛城君よ」
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