第2部「決着」

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「そういうことよ」  同じころ。さゆりもまた後藤にすべてを話していた。昨夜、立花は宇和島の誘惑に乗ったように見せかけ、役員会議で一網打尽にする策を後藤に告げていた。 最悪買収交渉も飛びかねないと彼もまた一人腹を括っていたが、さゆりは全てを知っていたわけである。 「恐れ入りました」 「残念だったわね、私だけ得したみたいで」 「いえ、華陽がクーデターでひっくり返らなかっただけでも。それに、妹さんが復活への道筋をつけられるのなら、願ってもいない僥倖です」  後藤は安堵した表情でさゆりを見て、そう言った。 「……もう少しさ、残ろうとは思わない?」 「はい?」 「これでもCFOまでさせたのよ? それだけ見込みがあると思ってるんだけど」 「ありがとうございます」 「だからさ、勿体ないじゃない。ここで投げ出すのは」 「確かに私も惜しいです。ですが……」  後藤は声を詰まらせ、上を向く。 「私は、ケンカ、しすぎました」  さゆりもまた絞り出すように声を出す。 「それが何だっていうの。『死なば諸共』でしょ?」 「一抜けた貴方がそれを言いますか! ハハハ!」 「笑いすぎ!」 「これは失礼……」 「……そこそこ役に立って、退屈しなかったからさ、またいつでも来なさいよ」 「葛城が来るなら、すぐ忘れますよ」  後藤はゆっくりと頭を下げ、その場を後にした。ちょうど立花から着信が入る。 「やられましたね、どうしましょうか」 『結局、また葛城に踊らされていたわけだ』  憑き物がとれたような調子で、立花は話す。 『あーあ! 腹立たしい!』  大雨は少しずつ弱まり、ところどころ晴れ間を覗かせる。スマートシティでは屋内の非常用電源が無事起動し、停電を回避した。  雨が止んだ中、点検と改修を終えた葛城はフードを脱ぎ、空を仰ぐ。 「葛城さんありがとうございます! 助かりました!」  マイル社員たちが歓喜で彼を取り囲む。  久しぶりに見る日差しがどこまでも眩しく見えた。
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