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終章「壊社員」
「よう、漁夫の利」
「やめてください! そんな言い方」
華陽とアポロンをめぐる騒動が終わりを告げて半年。諸所の後始末は済み、株主総会を経て立花の辞職が正式に決定した。総会終わりの廊下で弓月が長津田常務の背中を叩く。
「お前に常務は20年早い」
「なら、副社長は長すぎます」
「何とでも言え。これより上がないんだ。仕方ないだろ」
あの時、宇和島のクーデター人事案に賛同した役員は一斉に解職された。半数が総入れ替えとなり、本格的な葵体制がスタートする。
そんな中、かねてより葵に近しく、この騒動で最も遠い距離にいた長津田は異例のスピードで常務に昇進。善十郎の引退と共に、華陽の世代交代を象徴する出来事だった。
「……社長は、もう病院に?」
「先ほど向かわれた。毅然とされていたよ」
「……そうですか。総会での姿も立派でした」
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