Leave it to you!

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冷房の効いた部屋は、それでも冬のように寒いわけじゃない。 それなのに、あの雪の日を思い出してしまったのはなぜなのか……それはきっと、先生に初めて告白されたあの夜も、去る季節を惜しむような雪が舞っていたからなんだろう。 思えばあの夜からずっと、タクヤは恐れていたのかもしれない。 先生を、愛してしまうことを。 そして……いずれは彼を失う日が来るかもしれないことを。 「先生」 「はい……」 慧はまだ呆然としているようだった。 今まで自分のしてきたことを考えればなるのも当然で。タクヤは申し訳ない気持ちになりつつも、言葉を続けた。 「俺は、先生のことが好きです」 改めて口にすると、その重みで胸が潰れてしまいそうだった。 とても先生を見ていられず、顔を俯ける。 でも、ここで逃げたら、きっと今までと何も変わらない。 タクヤは拳に力を籠め、震える唇を開いた。 「でも……ずっと、怖かったんです。誰か一人を、愛することが」 「タクヤさん……」 「正直、今でも怖いです……だからね、先生」 タクヤはそう言うとすぐ、思いきり、目の前の胸へと飛び込んだ。 「わっ、タクヤさん……っ!?」 先生の慌てる声が聞こえてきたが、わざと無視してやる。その胸に顔を埋めると、先生の落ち着く匂いがした。 おずおずと、背中と腰に回された腕。 彼の体温に包まれながら、タクヤは囁いた。 「先生も、俺のこと、愛してくれますか」 「先生が愛してくれれば、俺も……俺自身を乗り越えられる、そんな気がするから」 そう告げた、次の瞬間。 ぎゅっとまた強く――いや、強いどころではない程の力で抱き締められ、タクヤはううっと呻き声をあげてしまう。 何とか身を捩って肩口から顔を出すと、慧はハッとしてその力を緩める。 それでも、その腕の中にタクヤを閉じ込めたまま、彼はこくこくと何度も頷いた。 「はいっ、もちろん、もちろんです……っ」 きつく抱き締められているせいで、先生の顔は見えなかった。 でも、その肩越しに見えた大きな月は、二人のこれからを照らすかのように、柔らかく輝いて見えた。
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