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しばらくそうして抱き合っていた二人が、唇を合せるのは必然のことで。
久しぶりに感じるお互いの唇に、慧もタクヤも、興奮と同じくらい、何か感慨めいたものを覚えていた。
「せんせい、……っ」
「タクヤさん……っ」
キスの合間、互いを呼ぶ声はどうしようもなく切羽詰まっている。
緩く食むようだったのはほんの最初だけで、すぐに息継ぎもできないぐらい、激しくなっていった。
「んっ、ン……っ」
鼻から抜ける声はぞっとするほど甘ったるくて、タクヤの全身はみるみる熱を帯びていく。
そして……しばらく先生を感じていなかった体の深いところが無性に疼いて、それにもまたいっそう羞恥を煽られてしまうのだった。
このままではまずい……色々と。
第一、ここは先生の職場だ。こんなことに耽っていいわけがない。
そもそも、いつ来客があるかも分からないのだ。
「……っ、せんせ、あの、……~~ッ!」
そう思って上げかけた声が、あっという間に飲み込まれていく。
慧はタクヤの後頭部をがっちりと押さえ込んでいて、彼が逃げることを許さないかのようだった。
分厚く、火傷しそうに熱い舌。それが、タクヤの中をほしいままに蹂躙していく。
――それが、こんなにも嬉しいだなんて。
「……ッ」
声にならない喘ぎ声が鼻から抜け、それと同時に、腰を抱く先生の腕にさらに力が籠る。
タクヤの理性もほとんど溶けてしまい、もうその熱に身をゆだねること以外、考えられなくなっていた。
隣に座っているせいで、上半身を捩らなければならないのがもどかしい。
それならいっそ跨いでしまおうか。
そして、そのまま――
ピンポーン
間の抜けたチャイムの音に、二人は同時に身体を跳ねさせた。
ピンポーン
二度目のチャイム音。
続いて、「先生~?」と、年老いた男性の声が聞こえてくる。
慧は慌ててソファから立ち上がる。だが、その股間はしっかりと盛り上がってしまっていて。
「……ッ、ちょ、ちょっと待ってください!!」
大声で玄関の向こうの人物に呼び掛けた先生は、すぐに何度も深呼吸を繰り返す。
そして、どうにかごまかせる程度にまでそこを落ち着かせると、どたどたと玄関へと飛び出していったのだった。
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