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タクヤの目の前に差し出された、先生の大きな手。
この手を取ってしまったら、彼の提案を受け入れることになってしまう。
確かに今、先生とセックスするのは正直、怖い。いや、怖くなってしまった。
気持ちが通じ合った今、身体まで交えてしまったら――きっと本当に、何もかも先生に裸にされてしまいそうな気がするから。
でも……。
「……」
「あの……タクヤさん?」
ただ彼の手を見つめるだけのタクヤに、慧がわずかに首を傾げる。
「あの、どうしました……わっ」
タクヤはその手を掴むと、ぐいっと自分の方へと引っ張る。
バランスを崩した先生は何とかソファの背もたれに手を付いて身体を支える。ギリギリ頭突きしないで済んだが、その代わり、先生の顔が目の前に迫っていた。
太くて凛々しい眉に、切れ長の一重の目。高く男らしい鼻と、引き締まった輪郭。この体格とポーカーフェイスのせいで近寄り難く見せているが、先生はやっぱり、タクヤの欲目でなくともカッコいいと思う。
そんなカッコいいはずの男の眉は力なく垂れ下がり、視線はおろおろと彷徨っている。
タクヤは男の目をじっと見つめる。
暗闇の中で見る、彼の真っ黒な瞳。どこまでも吸い込まれてしまいそうな、そんな瞳。
タクヤはちょっとだけ伸びあがると、男の唇に自分の唇を軽く触れ合わせた。
「……!!」
慧の目が見開かれる。
タクヤはふふ、と笑った。
「ねぇ、先生」
「はっ、はい……!?」
「じゃあ、連れていってください。先生のベッドに」
先生の太い首、そこに両手をするりと回す。
「で、それから……思いっきり、抱いてください」
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