429人が本棚に入れています
本棚に追加
/305ページ
「ひっ……」
タクヤの喉の奥から上がる、か細い悲鳴。
太腿の裏から盛り上がった場所へと手を這わせていく。タクヤの小ぶりで引き締まった尻。思わずそこを撫で擦ると、またタクヤは「んんっ」と可愛らしい嬌声を上げた。
慧はたまらず、パンツのゴムの内側へと指を潜り込ませようとした。
だが、その途端。
「やっ、先生っ!!」
頭の上から降ってきた鋭い声。慧はタクヤの胸から顔を上げる。
ただ、声を上げたタクヤ本人が一番びっくりしていたようで、慧とばちんと目が合った瞬間、赤くなった顔を気まずげに背けた。
「どうしました……?」
「……ッ」
慧が力を抜いてしまった隙に振りほどいた手でタクヤは口元を覆うと、その視線から逃れるように身体を横にして、忙しく肩を上下させている。
そんなタクヤの肌を外から差し込んだ光が一筋照らす。上気し、汗で濡れた肌――それだけで、慧のモノはますます昂ってしまう。
「……っ、先生、ちょっと待ってください!」
「……」
……ここでお預けというのは、流石の慧としても苦しすぎるのだが。それでも何とか「待て」の姿勢で彼の続きを待つ。
タクヤは視線だけでちらりと慧の顔を見やった後、目線を後ろの方へと向けた。
「あの、先生……ソコ、ですけど」
「そこ、とは……?」
「先生がさっき、おじさんくさく撫でてきたソコですよ!」
「あっ、すみません……ここ、ですか」
パンツの上から尻の谷間をするりと撫でられ、タクヤは眉を寄せて声にならない声を上げる。
「……っ、もう、先生!」
キッと睨み付ければ、慧は「すみません」と言ってくすりと笑う。
少し余裕が出てきているらしい彼を、タクヤは悔し紛れにもう一度睨んでやった。
「で、あの、ソコですけどね……たぶんもう、乾いちゃってるんじゃないかなって」
風呂から上がって、もう六時間以上も経とうとしている。あの時はすぐにできるようにと仕込んでおいたものも、そんなにいつまでもいい具合を保てるわけじゃない。
タクヤは目線をリビングへと続くドアへと向けた。
「先生、ちょっと向こうから持ってきてくれませんか」
「何をです?」
「さっきのソファの横のところに置いてあるんで。ジェルとか、ゴムとか、色々……」
コンビニに寄ってもらった時、必要そうなものは全て買っておいた。いざ……となったときに物が無くて白けるのだけは避けたかったから。
が、しかし。
「それは、大丈夫です」
「……え?」
慧はおもむろにベッドから起き上がる。
そして、その上部へと歩いていくと、ヘッドボードの引出しを開けた。
「先生?」
タクヤは身体を起こすと、先生の方へとベッドの上を移動する。
そして、彼の手に摘ままれていたものを覗き込んだ。
「あの、先生、これ……」
そこにあったのは、見慣れたパッケージのXLサイズのゴムと、同じく見慣れたローションのパウチだった。
「だから……大丈夫、です」
両手にそれらを持ったまま、慧はタクヤ以上に赤く染まった顔を逸らしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!