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「ミク先輩のカット部門優秀賞に、カンパイ!!」
日曜の夜遅くでも大いににぎわっている居酒屋の一室。
元気のいい掛け声とともにビールジョッキが交わされる音が響き渡る。
「みんな、ありがと~!!」
今日の主役であるミクは、目に涙を浮かべながら小さなトロフィーをぶんぶんと振り回した。
「いいなぁ、橋本は」
「いいなぁ、って……ショウだってあの後、審査員の○○さんから褒められてたじゃん」
「でも、賞はくれなかったじゃないですか」
「そりゃあ、もっともっと頑張れってことだろ」
「ですよね、くそ~!」
わいわいと好き勝手に楽しんでいるスタッフたち。大所帯というほどじゃないが随分と賑やかになった彼らを眺めながら、タクヤはちびちびとウイスキーを啜っていた。
もともと酒は強い方だしウイスキーも以前から嗜んではいたが、いつものバーでマスターから勧められたものが目が覚めるような香りと味わいで、そこから一気にハマってしまったのだ。
ちなみに、その時隣にいた慧には度の強いものは勧めていない。以前、アルコールで大変なことになったからだ。あの時のことは、今思い出しても全身が熱くなるほど恥ずかしい。……まぁ、全てタクヤの自業自得によるものなのだが。
そんなことを考えていたからか、ずっと抑え込んでいた思いがじわじわと沸き上がってきてしまう。
彼とはかれこれもう二か月近く、会えていなかった。
(先生……)
「……長、店長!」
「……っ!!」
びくんと肩が跳ねるほど驚いたタクヤに、「何なんですか店長~!!」とけらけらと笑い声を上げたのはミクだった。
「店長、飲んでます~?」
既に酔いが回ってきているらしい彼女はそう言ってタクヤの隣に座ると、手に持っていた馬鹿でかいジョッキをタクヤのグラスへとこつん、と合わせた。
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