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「ん……」
重い目をゆっくりと開く。
(あれ、ここ……どこだっけ)
やけに広いベッドに、うっすらと灯る間接照明。自分のアパートでないことだけは確かだ。
ぼやける視界と思考のまま、ごろりと身体を反転させようとしたタクヤだったが。
「うっ……!!」
腰に走った鈍痛と、さらにその下――今でもぼんやりとわだかまる熱に、一気に昨夜の記憶が蘇ってくる。
(そうだ、昨日は……)
先生に連れられやってきた、思い出の公園。
夜の海の美しさと、先生の切ない横顔。それがひどく胸を打って、タクヤはたまらず彼にキスをしたのだ。
その後、再び先生の車に乗り、彼がマンションへと誘ってくれそうな気配がして――その瞬間、タクヤの脳裏に浮かんだのがここだった。
先生の家まで我慢できない、というのもまぁ、ゼロじゃなかったが……それよりも、あえてここを選んだのには理由があった。
先生とここで初めて身体を交えたあの日……二人の関係はまだ、タクヤが勝手に設定した『お試し期間』の中だった。
もちろん、先生の初体験を良い思い出にしようと頑張ったし、先生も「これで初めて?」というぐらい、結構やりたい放題やってくれたしで、きっと行為そのものに不満はないとは思う。
でも、こうして気持ちが通じ合った今……ああやって二人の初めてを終わらせてしまったことが、少しだけ心に引っ掛かっていたのだ。
だから、何も告げずにあの公園へ連れてきた彼への意趣返し的な感じで、このホテルへと誘い込んで――そして、こっそりとあの夜のやり直しをするつもりでいた。
……でも、珍しくそんなしおらしい(?)態度でいたのがマズかったらしい。
『タクヤさん、かわいいです』
『声、もっと……もっと、聞かせてください』
『すごい、奥……全然離してくれないな』
「……~~ッ」
タクヤは唇を噛んで布団を被ると、じわじわとせり上がる熱を必死に耐える。
(こんなはずじゃなかったのに……)
最中にもそう思ったがもはや手遅れで、主導権は早々に彼の手に落ちてしまった後だった。しかも、こういうことにまで勤勉さを発揮してくる彼は、すっかりタクヤの悦ばせ方を知り尽くしていて。
後はもう、彼の下でひたすら喘ぐことしかできなくなってしまったのだった。
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