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「あ、タクヤさん、起きたんですね」
その声に、タクヤはわずかに布団から顔を出す。
ちらりと声の方を見やれば、シャワーを浴びてきた先生が、雑に髪を拭きながらこちらに歩いてくるところだった。
だからそうやって拭いちゃダメですってば、と、いつものように口や手を出したくなったが。タクヤはそれをぐっとこらえて何とか彼に背を向けた。
今、先生の顔を見たら、きっとまた恥ずかしい顔を見せてしまいそうだった。
そんなタクヤの気持ちに気付くはずもない先生は、タクヤの隣へとそっと腰を下ろす。
「タクヤさん、その、体調はいかがですか」
「…………大丈夫、です」
(全然大丈夫なんかじゃないけどな)
心の中でそう文句を言う。
大丈夫なわけがない。というか、あんな大きなモノで何度も突かれ、気絶するまでイかされまくっているのだ。それで平気な方がどうかしてる。
……でも、実際は身体より、気持ちの問題の方が大きいのだけど。
「そうですか……」
先生も、タクヤが心からそう思っていないことは分かっているらしい。
でも、以前にタクヤが「謝られるのは嫌なんです」と言ったことも律儀に覚えていたらしく。
「何か飲み物、取ってきますね」
力なくそう言うなり、すぐにベッドから立ち上がろうとした。
「待ってください!」
思った以上に大きな声が出て、タクヤは慌てて口に手をやる。
痛む身体を転がして先生の方を恐る恐る見れば、彼もまた目を丸くしていた。
「あの、どうかしましたか?」
「いえ、その……」
「タクヤさん……?」
大きくて温かい手のひらが、頬にぴたりと添えられる。
その真っ黒な瞳で見つめられるだけで、昨夜の記憶はいとも簡単に身体を侵食し始めるのだった。
先生の、大きくて熱い手のひら。それが余すところなく全身を撫でまわす。
はしたない声が出てしまうところに差し掛かるたび、そこを執拗に愛撫する長い指。それと連動するように腹の奥がたまらなく疼いて、焦らされるほどに我慢が利かなくなっていく。
耐え切れない、と涙の滲む目で訴えれば、ようやくその指は、切なくひくつくそこへと宛がわれて――
……もうこれ以上は無理だと、そう思っていたくせに。
「せんせい……」
自分でも引くほど甘えた声が出てしまう。
いや、声だけじゃない。きっと顔も相当だらしない感じになっているはずだ。
(でも、もう、いいか……)
このまま、先生の熱に溺れてしまおう。
タクヤは抵抗するのを諦めると、こちらを覗き込む慧のバスローブの襟をぐいっと掴み、自分の方へと引き寄せる。
慧は一瞬驚いたようだったが、すぐにその意図に気付いたらしい。
「タクヤさん……」
先生の凛々しい顔。それが、ふっと甘く蕩ける。
顔の横に置かれた彼の肘と、一気に縮まる距離。
そんなわずかな距離だって許せず、二人の視線も、呼吸までもが深く交じり合っていって――
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