Leave it to you!

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「……はぁ」 軽くシャワーを浴び、髪を拭いてため息を吐く。 予想通り『一回だけ』どころでは済まず、しかも最後の方は慧の方が止まれなくなってしまった。自分の堪え性の無さにはつくづく呆れてしまうのだが。 「いやでも、これはタクヤさんにも原因が……」 だって、あんな風に誘われて断れる人などいるのだろうか。ぶつぶつと小声で文句を言いながら、ベッドの上の彼を見やる。 身体を丸め、すでに夢の淵を漂っているタクヤ。その寝顔は実にあどけなく、さっきまでの奔放で妖艶な彼と同一人物だとは信じられないほどだった。 そして……そんな彼を見ているうちに、慧の胸にちょっとした悪戯心が込み上げてきた。 慧はその耳元に唇を寄せる。 そして、ほとんど囁くような声でこう問いかけた。 「ねぇ、タクヤさん」 「ん、んん……、はい……?」 「もし、タクヤさんに髪を切ってほしいときは、どうしたらいいですか」 「……おれに、ですか……?」 タクヤは目を瞑ったまま、むにゃむにゃとそう返す。 「そう、ですね……まずは、よやくしてもらえれば……」 「予約……電話で、ですか?」 「でんわでも、ねっとでも、どちらでも、だいじょうぶ、です……」 「分かりました、近々連絡しますね」 「はい、おまちして、おります……」 辛うじてそこまで言ったタクヤは、再びすうすうと寝息を立て始め……また、どんな形であれ言質を取った慧は、タクヤに教えてもらった通りにこの店へ直接電話を掛けたのだった。 「自分の言ったことの責任ぐらい、取りますよ」 そう唇を尖らせるタクヤ。てっきり何も覚えていないものだとばかり思っていたのだが……。 そして、あの日は暗めの茶色だった髪は明るい金色に染められていて、ふわりと空気を含んだ髪型は彼の甘い顔立ちによく似合っていた。 「……何ですか」 慧の髪に指を通しながら、タクヤは鏡の中の慧を睨む。 ここで正直に「見惚れていました」などと言えばより怒らせてしまいそうで、慧は「いや……」と誤魔化すと、とりあえず話を戻すことにした。 「予約した時、特に希望は出さなかったんです。タクヤさん、最近は経営の方で忙しいって言っていましたよね。だから、きっと無理だろうなと」 「……」 「でも、嬉しいです。やっぱり……タクヤさんに切ってもらいたかったから」 鏡の中の彼に向かい、そっと目を細める。 すると、タクヤはなぜかフイっと顔を背けてしまった。 「やめてくださいよ、先生」 「……はい?」 「ここで、そんな顔するの……」 ……その耳は、見間違いようのないほど真っ赤に染まっていた。
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