Leave it to you!

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「えっ、いや、その、すみませんでした……」 「……」 こんなに分かりやすく照れているタクヤは久しぶりで、伝染するように慧までもが赤面してしまう。 ……そのまま二人だけの世界に突入してしまいそうになったが。 「あ、あの、タクヤさん」 「……ん、何ですか」 「その……、後ろ、なんですけど……」 慧はそろりと視線を鏡の隅へと移す。 「後ろ……?」 タクヤもまた、その視線を追いかけて―― 「……!!」 バッと背後を振り返る。 と、そこにいたのは。 「こらミク、フミト!」 物陰から団子のように並んで顔を出していた二人――そう、ついさっき慧を案内してくれた赤い髪の女性と、慧が大声を出した時に後ろを通っていた男性が、同時にびくんと肩を震わせた。 「何やってるんだそこで!」 「えっ!? いや、ただフミトと一緒に休憩していただけですけど~?」 「嘘つけ!」 しっ、しっ、と忌々しげに払いのけられ、ミクはかなり名残惜しそうに、一方、無理矢理付き合わされたのだろうフミトは「ほら見たことか」的な呆れ顔をしながらバックヤードに引っ込んでいった。 「あいつら……!」 額に手をやってため息を吐くタクヤを、慧は心配そうに見つめていたのだが。 「あの……タクヤさん」 「……何でしょう」 「やっぱり僕、場違いでしたよね」 「は!? いやいやいやいや、決してそういうことじゃないですから!」 「でも今、すごく見られていたような……」 「い、いや、あれは……っ」 二人がもう、俺達の関係を知っているからですよ――なんて言おうものなら、先生は悲鳴を上げてここから飛び出していきかねない。 「きっと、先生がカッコいいからですよ」 とりあえずそう言って微笑んでやったが……でも、決してそれはお世辞などではなかった。 キリリとした目元が涼やかで、加えて体格もかなり良い先生は、一緒に歩いているとちらちらと人目を引くことが多かった。でも、最近はその頻度がずっと上がっているのだ。 『先生、表情が明るくなりましたよね』 これは先日、奈穂子さんに言われた台詞だ。 ちなみに、先生の事務所に勤める二人は既にタクヤと慧との関係を知っていたらしく――いや、ただ程度ではない気もするのだが――この間はなんと事務所の飲み会にも招かれてしまうほど、仲良くさせてもらっていたりする。 ところでそう言われた時、タクヤは『ですかね~?』とお茶を濁したが……まさに彼女の言う通り、先生の表情はずいぶんと変わった。それに、よく笑うようになった。 それだけで泣く子も黙るような威圧的な雰囲気は消え、美晴さん曰く『時代劇のヒーロー』的な、元々持っている男前さが引き立つようになったんだろう。 『ねぇ、あの人カッコよくない?』 すれ違いざまに聞こえる声は、男としては悔しくもあり、付き合っている立場からすれば、少しやきもきしてしまうこともあるのだった。
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