【 エピローグ 】

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【 エピローグ 】

 その後、私はミントの両親から事情を電話で聞いた。  やはりミントは、あの日、歩道橋の下の道路で、乗用車にはねられたとのことだった。  命は助かったものの、やはり重症だという……。  私は、ミントの両親に泣きながら謝ったが、私のせいじゃないと言ってくれる。  でも、間違いなく私のせい……。私の責任だ……。  ――それから時は経ち、私たち3年生も桜の咲く頃、高校を卒業をした。  でも、卒業式の場に、ミントの姿はなかった。  私は結局、西京大学の受験は、不合格。  覚悟はしていたけど、ショックは意外に大きい。  でも、それ以上に、ミントは試験すら受けることができなかった。  それは、私のせい……。  私は、4月から浪人生活へ入る。  ――今日、またここへ来てしまった。    ミントと中学の頃、毎日来た、この夕日が綺麗な小さな川沿いの土手。  いつものように、コンクリートでできた階段を上から一つずつ数えて、3段目に腰掛ける。  また自然と涙が止まらなくなる……。  零した涙で、階段のコンクリートが悲しく濡れ広がる……。  その時――。 「アズ……」  幻聴か、頭がおかしくなっちゃったのか、ミントの声が聞こえてくる……。 「アズ、聞こえてる?」  いや、聞こえてない……。気のせいだ。今日も頭がおかしい……。  何かを振り払うかのように、頭を左右に振りながら、クシャクシャッと髪を()(むし)る……。 「いい加減、こっち向けよ」 『ツン、ツン……』 「えっ……?」  誰かが私の背中をツンツンする……。 「泣いててもいいけどさ、アズらしく笑ってた方が俺は好きだな」  ゆっくりと、声の方へ顔を向ける。  見上げると、そこには、自転車に乗ったミントの姿が……。 「荷台、新しいの付けといたから、後ろ乗ってくか。久しぶりに」  そう言ってミントは、親指を立てながら、後ろを指差す。  新品の荷台だ……。私だけの特等席……  やっと見つけた……。  ミントが照れくさそうに、頭を掻きながら笑っている。  私は……、  やっぱり、ミントのことが好き……。 「予備校、ふたりで行くぞ。来年こそ、ハイタッチだからな」 「うん……」  ふたりの『おめでとう』は、少しだけおあずけ。  でも、彼と一緒ならの乗り切れそうな気がする。  涙目になりながら、ミントの好きだっていう笑顔を久しぶりに大きく作った。  あの頃のように……。  ここから見上げた今日の空は、雲一つないミント色。  彼の新しい自転車の荷台には、猫のバックチャームが2つ、春の風に仲良く並んで揺れている。 (了)
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