2.雄風と飛廉

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「芙羽、お前ほんっとうにお人好しだな。普通の人間なら志之介を責めたっておかしくない。志之介だけじゃない。そもそも契約をしようと言ったオレに1番の責任があるのに、文句さえ言わないんだな」 「……そんなに笑わなくてもいいでしょ。私はただ自分に正直に生きているだけ。志之介くんのことも、もちろん飛廉さんのことも責めるつもりは全くないよ。だって事件に関わるのも契約すると決めたのも私なんだから」  危険かもしれないことは百も承知。取り乱してしまったのは覚悟が足りていなかったから。万が一次に同じようなことがあったとしても、同じ醜態を晒さないと心に誓う。 「……ありがとな」  気を抜くと聞きのがしそうな程の声量で言われた言葉に芙羽は目を丸くした。  飛廉の方をすぐに見るが、もう志之介と話を進めていてどんな意図で言ったのかわからなかった。今日だけで飛廉の違う一面をたくさん見れたようで新鮮な気持ちになる。  これからも側にいたら新たな一面を見ることができるのかと、少しだけ楽しみに思えた。 「……さん、芙羽さん、聞いてますか?」 「え、ごめん。なにか言った?」  不意に志之介に声をかけられて慌てて2人に視線を向ける。飛廉は呆れた顔で、志之介は相変わらず無表情。会話の内容がわからない。志之介は軽く咳払いをした。
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