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事件現場となった公園は昼前なのに薄暗かった。事件が起きてから1週間、久しぶりに訪れた公園はいつも通り人の気配はなく、警察の姿すらない。まだ犯人が捕まっていないというのに現場の捜査は終わったのだろうか。太陽は厚い雲に覆われ始め、夕方と錯覚してしまうほど暗くなっていた。
後ろからソレの気配がして、芙羽は少しでも離れようと公園の奥へと進む。あと少しで桜の木が見えてくる、そんな時に風がザアッと砂埃を巻き上げながら吹き抜けた。
「……うっ」
思わず目を瞑り、砂埃でゴロゴロとする目を擦りながら開ける。視界に入ってきた光景に芙羽の体は硬直していしまった。
人が、いた。
さっきまで公園には芙羽しかいなかったはずなのに、公園の真ん中、芙羽が通り過ぎた場所に2人の男性が立っていた。
1人は離れていてもわかるスラリとした体型にグレーのストライプスーツを纏い、肩まで伸ばした黒髪を1つに結んでいる。センター分けをした前髪から覗く黒めは鋭く、彫が深い顔立ちは今まで見たことがないくらい整っていた。
芙羽と同年代ぐらいに見える男性とは反対に、もう1人はストライプスーツの男より低めの身長で、紺のスーツを着た姿は新卒の大学生というような装いだった。顔立ちも幼く、黒髪の癖っ毛と大きな瞳が印象的だ。
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