14人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
「先程芙羽さんを襲った犯人には逃げられてしまいましたが、警察に通報をし、犯人が見つかるまではこの辺り一体の警備強化と、周囲の住宅や学校に注意を呼び掛けてもらえるように手配しました。芙羽さんもしばらくは1人で外出はしないようにしてください」
「そっか、よかった。それなら他の人への被害は心配しなくても大丈夫そうだね。志之介くんありがとう」
「いえ……俺は犯人を逃がしてしまいましたし、出来ることがこれくらいしかなかったので……」
志之介は無表情のままなのに、視線を下に下ろした姿は落ち込んでいるように見える。本来なら被害者である芙羽が警察に連絡するべきなのに志之介が全てやってくれていた。芙羽からしてみれば感謝の気持ちを伝えたかっただけなのに志之介には上手く届かなかったようだ。
ソファから志之介の様子を見ていた飛廉は、立ち上がると俯く志之介の肩を軽く叩いた。志之介は肩を微かに揺らして顔を上げ、
「次こそは必ず捕まえます」
と呟いた。
――ブブッ。
スマホのバイブ音とともに、芙羽のパンツのポケットが振動した。驚いてスマホを手に取る。
飛廉と志之介の視線を感じながらスマホを開くと、親友からのメッセージが1件届いている。内容は、明日のランチの誘いだった。親友には随分心配をかけてしまっているし、すぐにでも返事をしたい。
けれど、芙羽はたった今1人で外出することを控えるように言われたばかりだ。芙羽の安全を考えてしてもらった提案を無碍にすることはできない。個人的な、しかも親友とのランチに飛廉と志之介を付き合わせるのもどうなのかと考えてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!