<1・はなす。>

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 ***  佐藤深月は、クラスでもかなり大人しい部類の生徒であるようだった。  中学受験を睨んでいるのか、週に一度は塾に行って勉強している。勉強そのものが嫌いではないようで、休み時間であっても教科書を読んでいることさえあるほど真面目な生徒であるらしい。頭がよく、大人が読んでいるような本を机の上で広げているのも何度も見たことがあるそうだ。友達に宿題を教えていることもあるのだとか、なんとか。  今時珍しい、おさげにメガネスタイルの女子小学生。しかし頭がいいだけでなく、メガネをかけていても分かるほど可愛らしい顔立ちをしているという。そして、誰に対しても親切。大人しいけれど芯が強い性格で、みんながやりたがらないクラス委員を率先してやるような人物であるのだとか。  いつもみんなの輪の中心にいるタイプではないが、親友と呼べるであろう友達も何人かいる。男子のことも馬鹿にしたりしないで、困っていたら積極的に雑務を手伝ってくれたりもする。女子にも男子にも嫌われにくいタイプだと思う、と螢は語った。 「だから、最初は……なんか様子が変だな、ってことしか思ってなかったんだよ。休み時間は大抵、教科書かなんかの本を読んでるのに、ここ最近はその様子もなくてさ。なんかぼーとして、窓の外を見てるばっかりだったというか」 「体調が悪いとか、そういうのじゃなくて?」 「じゃ、ないと思う。というか、本を持ってきてるのは知ってるんだよ、机の中にあったから。でもそれを出してみんなの前で読むのを控えてるのかなーってかんじ。最近はむしろスマホを見てため息ついてる方が増えたかなって」 「なるほど」  女子であるので、どうしても同性と比べて話す機会は多くないという螢。何か悩みでもあるなら相談に乗りたいと思う反面、それが女のコ特有の悩みであったなら自分は完全に門外漢である。  訊きたいけど訊けないでいるうちに、彼女の友人達が心配して彼女に声をかけたのだそうだ。その時の会話が大体こんなかんじで。
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