<1・はなす。>

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『深月ちゃん、最近顔暗いけど、どうしたの?なんかあったの?LINEの返事も遅いし……』 『ごめんね、結実(ゆみ)ちゃん。なんか、スマホ見るのが嫌っていうか、億劫っていうか。通知来てても触りたくなくて……』 『そのわりに、最近スマホ見る頻度増えてない?』 『うん、自分でも思う。気になっちゃうのに見るのが嫌って、矛盾してるよね』 『本当、何があったの?』 『……大したことないよ。大したことないんだけど、でも』  深月ははっきり、こう言っていたのだ。 『なんか、学校……来たくないなって』  それまでは。学校の勉強もクラブや委員会の活動も熱心、というか楽しんでいるフシさえあった彼女である。それがどうして突然、学校に来たくないなんてことになったのだろう。螢は心底困惑したという。 「学校に来たくない理由って言ったら、家族が病気になって心配だからだとか、そうでないならいじめられてるくらいしかないじゃん?でも、深月の家って弁当屋さんでさ、学校帰りに通るけど今日もフツーにやってるんだよね。お父さんもお母さんも元気そうだったし」 「なら、いじめられてるくらいしかないって?」 「うん。でも、学校で酷いことされてる様子ないんだよな。何かを隠されてるとか、悪口とかも……少なくとも僕の耳じゃ聞かないし」  だからいじめも確証がないんだよ、としょんぼりする螢。なるほどな、と吹雪は頷いた。彼の話を聞いている間に、ソーダ味のアイスバーは食べ終わっている。残念ながら、あたり、のマークはないが。 「いじめられてるなら助けたいし、悩みがあるならその正体を突き止めて解決してあげたいってわけか。うーん、恋する男子、健気だねぇ」  ぽーい、とその棒を投げ捨てる。公園のゴミ箱の中に、からんっと綺麗に落ちるそれ。ストライクだ。 「ま、可愛い弟分の悩みだ。ふぶ兄ちゃんも一肌脱いであげますかね」 「ほ、ほんと?」 「おう」  そうと決まれば、まず情報収集である。名探偵の基本だろう。 「まず、気になったことがあるから、そこから調べるか。あと、その都度引っかかったことがあれば質問するからそのつもりでな」
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