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一ヶ月後
私達の家族の行きつけの喫茶店は、レトロ風な
昭和の理恵がテレビで見た喫茶店に似ていた。
でも、決して古い感じばかりではなく、
ところどころにお洒落な絵画や花瓶に花が飾って
あったり緑の植物でお店が飾られていて、
今風な感じも残しつつレトロさがあるお洒落な落ち着く喫茶店だった。
和恵は「セルフサービス」じゃない落ち着いた
雰囲気が気に入っていた。
ジャズのメロディが流れていているのも気に入っていた。
父の尊もジャズを聴きながら珈琲を飲むのはとても落ち着くと言っていた。
理恵もほっとするお気に入りの場所でいつも
「大人になったら一人で通う」そう心の中で呟いていた。
ところがそんな事を考えていた日から一ヶ月たった日曜日、喫茶店が恐ろしい場所へと変わっていく事になる。。
それは、一ヶ月後の日曜日の朝から始まった。
「え~日曜日に仕事だなんて今までなかったじゃない?まさか浮気とか?」
「馬鹿言うなよ。後輩がお客様を怒らせてしまったんだよ。僕が後輩と謝りに行かなくちゃならなくなったんだよ」
「え~いつものモーニングは?」
「ごめん。理恵と二人で行ってくれ」
理恵は珍しくお父さんとお母さんが言い争っている声で目が覚めた。
「どうしたの?」
理恵は父の尊に聞いた。
「ごめん。理恵今日、急に仕事になってしまったんだ。家族のルール破る時が来るとは思わなかったけど、今日のモーニングはお母さんと二人で行って
来てくれないか?この埋め合わせは必ずするから」
理恵と和恵は
「わかった。仕事じゃ仕方ないわね。行ってらっしゃい」
二人は父の尊を見送ると支度をして駅に向かった。
駅は一条家からすぐなので五分で駅に着いた。
「仕方ないわね理恵。今日はモーニングに限らずいろいろ食べていいからね。日曜日なのに仕事なんて~」
「仕方ないよ~お母さんほら、電車が来たよ」
「本当ね。隣街だからすぐ着くわ。女二人で楽しんじゃいましょう」
二人は隣街に行くため電車に乗り込んだ。
いつものようにだいたい時間も同じくらいの電車に……。
ところがその電車は次の駅に着く前に急に止まってしまった。ガタン❗と、いう音とともに……。
「何があったのかしら?故障かしら?」
その時アナウンスが流れた。
「ただいま車両が故障しました。修理に30分ほどかかりますのでそのまま待機をお願いいたします」
理恵と和恵は
「今日はついてないわね」
そう言ってがっかりしていた。その時、電車の窓から火災が発生しているのを二人は見た。
「お母さんあの~火災ってずいぶん大きな火災みたいに見えるけどまさか……ショッピングモールじゃないわよね?」
「まさかね?携帯のニュースで見てみるわ」
和恵は慌てて携帯のニュースを見た。
嫌な予感は的中した。いつも家族で行っていた。
大型ショッピングモールのマインが火事で燃えているとのニュースが携帯のニュースに載っていた。
理恵と和恵はそのショッピングモールの近くの行きつけの喫茶店「夢」が燃えていないか?
心配でたまらなかった。
「大丈夫だよね。夢は……」
「大丈夫よ。とにかく電車が動いて隣街に行ったら確かめてみましょう」
二人は電車の中で
「早く電車動いて」そう言って祈っていた……。
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