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車内
電車の中はざわついていた。
イライラしている人……。不安そうな人……
日曜日ということもあってたくさんの人が電車に
乗っていた。
その時、車掌室に乗客の人は大勢向かっていた。
「おい❗車掌急いでるんだよ」
「何とかならないのか?」
「日曜日でも会社なんだよ❗」
「線路から隣の駅に行くから降ろしてくれ❗」
「何とかしてよ❗」
たくさんの人の声に車掌は言った。
「わかりました。では線路から隣の駅に行きますので隣の駅から今、援助を頼みます」
しばらくすると車掌の言った通りドアは開けられ
線路の下には隣駅から来たらしい駅員が来ていた。
「やだー怖いよ~ママー」
そう言って泣く子供……
「意外と線路に降りるのも怖いわ~」
そう言う高所恐怖症の女性
そんな乗客を車掌は宥めながら線路に降ろした。
下で援助をしてくれる駅員とともに。。。
それぞれが線路に降りて行った。
理恵も和恵も恐る恐る降りて行った。
「じゃあ気を付けてください。これで全員ですね。では隣の駅まで私が誘導いたします。
ゆっくり歩きますのでお子さんがいる方はお子さまの手を離さずに私の後をついて来てください」
乗客は全員車掌の後を付いて行った。。。
理恵は言った。
「お母さん隣の駅ってこんなに遠かったっけ?」
和恵も理恵と同じ事を考えていた。
「そうね~なんだか遠い気がする。それに車掌さんの前のあのどんよりした灰色の薄暗い空気は何かしら?」
他の乗客も言った。
「おい❗こんなに隣の駅まで遠いのかよ?
本当にこっちだよな?線路の上なんだから」
車掌は言った。
「ほら見えてきましたよ。お客様……電車と歩きでは違いますからね。電車だと近くても歩きだと遠く感じる事もありますからね」
車掌の言葉にみんな安堵していた。
やっと着いた隣町の駅……
でも、乗客は全員不安な顔をしていた。
この時間は日曜日ならたくさんの人が隣町のホームにいるはず?なのにホームにいるのは線路を歩いて来た私達と車掌さんと援助してくれた駅員さんだった。
何かがおかしい?この時、妙な違和感を理恵と和恵
他の乗客も感じている様子だった。
「ねえ?何で私達だけしかこのホームにいないの?」
「いつもはこのホームもっとたくさん人がいるよね?」
口々に乗客は不安を隠せない様子だった。。
それに今日は快晴のはずだったなのに
急にどんよりした今まで見たことがないような
空の色に不安を感じた。。。
「お母さん、空の色が~空の色が~黒い。
く、ろ、い」
線路から歩いて来た乗客達も和恵も理恵も空の色を見て震えが止まらなかった。
「理恵とにかく喫茶店に行きましょう。火災が心配だわ」そう言った。
和恵と理恵は改札口に向かうと目の前にある喫茶店夢に向かった。火災からの影響を行きつけの喫茶店は受けてないようだったようだ。
でも、喫茶店はシャッターが降りて閉まっていた。そして張り紙が張ってあった。
「都合によりしばらく休みます」
行きつけの喫茶店が営業していない日を見るのは
和恵と理恵にとって初めての事だった……。
「何か?あったのかな?でも、無事ならまた美味しい珈琲飲めるものね」
「そうね~でも、理恵見て大型ショッピングセンターほとんど焼けてしまってるわ。
営業再会は当分先みたいね。でも、ここら辺って
夢と大型ショッピングセンターしかないのよね。
とりあえず歩いて家に帰りましょう途中でお店があるかもしれないからそこで朝御飯にしましょうか?」
そう思っていると車掌さんが言った。
「あの~朝御飯にお困りでしたら私達の駅員食堂で食べませんか?ここら辺はレストランもないし、
歩いて帰ってもたぶんないと思いますよ。
今日は迷惑かけてしまいましたので」
「よろしいんですか?」
「はい、どうぞこちらに」
和恵と理恵は車掌さんの後を付いて行き社員食堂でモーニングを食べた。
ホットチーズサンドとウインナーとサラダと珈琲
いつもの行きつけの喫茶店のモーニングのようだった。
和恵と理恵は車掌にお礼を言って自宅までまた電車で帰った。
「今度はたくさんホームに人がいるね。きっと私達の思い過ごしかもしれないね」
「でも、当分行きつけの喫茶店や大型ショッピングセンターには行かれないね。どこか別のところの
モーニングでも家に着いたら探してみないとね」
「そうだね。今度はお父さんと行かれるしね。
お父さんが家に帰って来たら事情を話さないとね。きっとがっかりするわよ~。
お母さんが作ることになるかもね~。
料理に自信ないから冷凍食品に頼る事になるけど」
「そうだよね~前お母さんが頑張って作るわよ❗と張り切って作った料理は~
ちょっと微妙だった~」
「お母さんだってその気になれば作れるよ」
二人はこの時、まだ何も知らずに笑っていた。
この時から幸せな家族が恐ろしい事にまきこまれていくことも知らずに……。
ただ、ただ、二人は笑っていた……。
行きつけの喫茶店が恐ろしい場所に変わっていくとも知らないで……。
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