花束

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花束

和恵と理恵は自宅に戻った。結婚記念日の花束が 玄関の前に置いてあった。花束から見える手紙も 置いてあった。 和恵は 「これは……宅配業者から受け取ったはず……どういう事なの?」 その時、近所の人が数人で和恵と理恵の目の前で話していた。 「また一条さんのところのご主人亡くなった奥様の為に結婚記念日にお花を送ったのね。 いつもは自分で受け取って仏壇にお供えしてるのにね。自分が受け取れない場合は玄関先に置いておいてくださいと宅配業者に頼んでほしいと花屋さんに頼んでいたらしいわ」 「今回は、火災でご主人まで亡くなってしまって この花束を受け取れなかったのね~」 「毎回結婚記念日には有給休暇とって会社を休んでるものね」 「ご主人に聞いたんだけど、奥さんと娘さんがいた頃は奥さんもご主人も仕事が忙しくて、喧嘩ばかりしていたそうよ。だからこれからはやり直すつもりで娘さんが小学校三年になってからモーニングを 食べに家族で毎週日曜日に隣街の喫茶店に出掛けるって決めたのでもう喧嘩はしませんので毎日煩くしてご迷惑かけて申し訳ありませんでしたって 言ってたのに~まさか初めて行った喫茶店の帰り道に事故に遭って娘さんと奥さんを亡くしてしまう なんてね」 「いつも結婚記念日には部屋の中からごめん。 俺のせいでごめんって聞こえるのよね。 まだ立ち直れてないのよね~」 「言い方は悪いけど、これで家族一緒になれるかも知れないわ。向こうで仲良くやってほしいわ」 「本当ね~あのご主人まだ妻と娘は生きている 死んでないって言ってたものね~」 和恵は自分と理恵の前でそんな話をした 近所の人に精一杯大きな声で言ったつもりだった。 「私達は生きているわ‼️いい加減な事言わないで‼️」 でも、その声は近所の人には聞こえていない様子 だった。 そして和恵と理恵もその人達に触れることさえ できなかった。そして玄関の外に置いてある花で さえ触る事ができなかった。 理恵は言った。 「私達本当はとっくに死んでいたんだよ。 だとしたら鍵を開けなくても部屋に入れるね。 私達の仏壇見てみましょうよ。 そしてもう一度引き出しも見てみましょうよ」 理恵に言われて二人は部屋の中に入ってみることにした……。
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