夏田より:滝廉太郎と小石川植物園

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夏田より:滝廉太郎と小石川植物園

 「春林奇譚」、お目に留めてくださって本当にありがとうございます。  これは私がはじめてweb投稿した短編です。  それまでの私の読書といえば、えっちなBL漫画を除けば「紙の本」100%。全くなじみのなかった「スマホやパソコンの画面」での「横書き」というスタイルを前にして、あまりたくさんの描写があると読みにくいかな、改行は多いほうがいいかな……などと迷いつつ、そのわりにどんなweb小説が人気なのかリサーチもせず、ただただ自分が好きなボーイズラブを形にしたものであります。  それでも幸いにも目に留めてくださる方々があり、そこから私の創作活動が広がっていって、2021年は忘れられない一年になりました。  本作の登場人物ふたりは、滝廉太郎を思い浮かべながら書きました。私が学生時代に所属していた混声合唱団でたくさん彼の作品を勉強して歌ったこととか、数年前に偶然目にしたドキュメンタリー番組が切なくて忘れがたかったことから、人物イメージとしてお借りしました。私個人としては、生きたかったであろう貴船さんの魂が黒田君の中に宿るような、「ふたりでひとり」のイメージを持っています。  それから、ラストシーンで貴船さんと黒田君が訪れる「小石川植物園」は、東京都文京区にある東京大学の付属植物園で、Eテレ「0655」の歌もありますね。実際に、明治の当時からひろく一般に開放されていました。そして、泉鏡花の短編を坂東玉三郎が映像化した「外科室」(1992)という作品のロケ地でもあります。映画の冒頭、桜の林のシーンがため息ものの美しさで…それが好きすぎて…私は毎年欠かさず桜を観に行くようにしています。  貴船さんという名前もじつは「外科室」に登場する伯爵夫人のお名前だったりしましてね…。    作中に登場するシューマンの「詩人の恋」やブリュートナーのピアノの話、蜂蜜の話、帝大漕艇部の同級生の描写、陰間の玩具や丁字油、黒羽二重の布団(キャッ♡)なんかは、私なりにまじめに明治時代の資料を探して調べ、Excelで年表も作ったりしながら書きました。  「詩人の恋」については、今後、別の作品でがっつり取り組みたいと思っているモチーフのひとつです(話せば長い)。    最後に宣伝。「春林奇譚」の「その後」を書いた短編もあります。よろしければぜひお読みください…魔性の誘い受け・貴船さんにふりまわされるばかりだった黒田君が、長いおあずけをくらった反動で貴船さんを責め立ててますw ◆大つごもりまで https://estar.jp/novels/25918562  長くなりました。最後までお読みくださり、ありがとうございました!  夏田樹    
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