ホワイトムスクの雪

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泊る事になったので、服を買っているのか…。 私はそう思い、カジュアルウエアの店を覗いた。 服も髪も濡れているので、中に入る事を躊躇したが、とりあえずタオルを買い、濡れた髪を拭いた。 そして店の中を一周したが、そこにも上杉さんの姿は見当たらなかった。 私は外に出て、吹雪く雪の中を歩いた。 もう思い付く店が無いので、そのあたりの店を片っ端から覗き込むが、上杉さんらしい人は見当たらなかった。 気が付くと日も暮れて、雪の積もった静かな街だけが佇んでいる様だった。 もう帰っているかもしれない。 私は家に引き返す事にした。 いつもなら車で行く距離を歩き回った。 慣れない雪の上を歩くと普段使わない筋肉を使うのだろう、やけに足腰が重い。
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