ホワイトムスクの雪

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「せめて電話は持って出て下さい」 私は安堵からか、一気に疲れが出た様な気がした。 膝に手を突いて、息を吐いた。 「国道沿いで服とか、夕飯の材料とか買ってたので…」 上杉さんは大きな袋を幾つも提げていた。 私は、その袋を上杉さんの手から取り、力なく微笑む。 「とりあえず帰りましょう。こんな雪の中じゃ冷え切ってしまったでしょう」 私はサクサクと音の鳴る雪の上を歩いた。 鍵を開けて家の中に入る。 私も上杉さんも玄関で上着を脱いで、その上着を玄関のハンガーに掛けた。 流石に上着からも雫が滴る様に落ちていた。 暖房の効いたリビングに入って初めて、外気が如何に冷たかったを実感した。 「シャワー使って下さい」 私が言うと、 「先生の方が濡れてますよ。先に使って下さい」 と私が肩に掛けていたタオルで私の濡れた頭を上杉さんは拭いた。
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