プロローグ

1/1
前へ
/11ページ
次へ

プロローグ

 私の名前は葵。どこにでもいる、だけどここにしかいない、特別な二十歳の大学生。どこにでもいる普通の女の子だったらいいのに。  二十歳。はたち、なんて嫌な響き。  嘘みたいだけど、あの時、私は大学二年生で京都に住んでいた。大したことない私立大学。認めざると言えず三流なんだと気づく。その時の私は、とにかく毎日がつまらなくて辟易していた。  なんとなく感じる閉塞感。誰か私の本当の気持ちを分かってくれたら、いつも側にいてくれたら、皆と同じように笑えたら。  二十歳なんてなりたくなかった。  私の二十歳はこんなはずじゃなかった、いつもそう思った。 それが自分のせいだって少しはわかっていたけど、少しなんてほとんどわかってないも同じ。そのことに気づいたのは随分後のことだった。  この話は、私が二十歳の時の忘れられない恋の話だ。 冬から春まで、まるでワンクールのドラマみたい。ありきたりだけど、私にとっては特別で、胸が痛くて、人生の全てなんて言えば大げさだけど、私の核を作ったとも言える出来事だった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加