最終話⑥苦しみの始まり

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最終話⑥苦しみの始まり

蕾だった俺は、 花開く事が出来る様になった。 学年が変わり、春が来た。 男も女も多感の始まり、 それは、俺にとって長い苦しみの始まり。 この頃、 男女ともに友達が多かった俺は、 毎日のように、 繰り広げられる、 恋の話題にも積極的だった。 何故なら、 [好き]という感覚、感情、 付き合うというステータス、 その対象は[異性]だったからだ。 少しずつ、 あいつとあいつが一緒に帰ったとか、 誰と誰が付き合ってるとか、 あの2人はもうキスしたとか、 そんな話題が増える。 実際叶えてるそんな連中が羨ましかった。 当時、俺の偽らざる気持ちだった。 好きな子もいた。 好かれる事もあった。 告白したこともあった。 一緒に帰りたいし、 デートに行きたいし。 でも何故かそれから先は、 全く関心が無かった。 周りの連中も、成長を続け、 より深く、よりリアルに、 行為に関する深掘りをする。 俺はそれが、 当たり前、普通、当然、 だとわかってはいた。 俺自身の事を除けば。 次第に、 俺は俺自身に、 違和感を感じてくる。 男女の営みについて、 具体性が増せば増すほど、 俺はそこに何の感情も覚えない。 肉体的に反応することもない。 俺は既に、 簡単に言えば、気持ち良さを、 何度も知っている。 じゃああれは何だったのか? そういった行為は、 やってはいけない事だった? 頭がおかしいのか? それとも病気? 同性とそうなるという事は、 俺は男じゃないの? でも、スカート履いたり、 ブラは付けたくないぞ。 俺は自分を見失っていった。 未だに、 好きになるのは異性、 でも体は同性を求めてる。 簡単に答えを知る術もない時代。 俺は異常だと認識した。 病気ではないけど、 俺は普通の人ではないんだと。 夜になれば、 あの時の事を思い返しながら慰める。 朝になれば、 好きな子の事でいっぱいになる。 俺は次第に、 今まで連んでいた連中から、 距離を置く。 話す事に困るから。 異常な俺を知られたくないから。 ちっぽけな俺のプライドだった。 俺はそういった色恋とは無縁なグループに、 身を置いた。 本来の俺には、 全く興味が湧かない話題のグループに。 そうして、 俺は卒業間近までの時間を、 自分を決め付け、 自分を軽蔑し、 自分を偽り、 孤独の中に身を置いた。 誰かが教えてくれることもない、 どこかに答えが載っているわけでもない、 俺自身が、理解するしかなかった。 俺自身が、身の振り方を決めるしかなかった。 2年近い時間を使い、 俺は周りとは、違う事を理解した。 異常ではない事も理解した。 異性を好きになる事もやめられた。 好きの先に何があるか、 それが俺に出来るのか、 出来ない事を知ったから、やめられた。 でも、同性を好きになる気持ちは、 まだわからない。 それは一旦、置いておく事にした。 それを知るのは当面先の事。 受験シーズン。 苦しみから抜け出す為、 俺は、当初決めていた共学の進学校から、 私立の男子校へと進路を変えた。 結果的にこの選択は、 俺に花の盛りを教えてくれる事になる。 花盛りの頃、俺の夢は、 俺を大人に変えていく。 完 ※次作に続きます
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