⑤蕾から花へ

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⑤蕾から花へ

僕の勢力は増し、 怖いながらも、 急速に俺との同化は進んだ。 ケンタさんとの事が、 それを助長させた事実は否めない。 もちろん互いが望んだ事でもあったし。 冬のある日、 俺は思い出していた。 俺が初めて憧れた人、 目覚めさせてくれた人、 トモくんのことを。 実は、 ケンタさんと同学年別クラスのトモくんは、 ちょっとヤンチャな感じになっていた。 1年坊主など近づき難い存在。 髪も伸ばし、 眉を細工。 体はスリムになり、 当時の憧れからは遠かった。 俺は確かめたかった。 あの昂りは本気? そして今、どう変化した? あの時の俺とは違う俺、 トモくんを試す事にした。 3学期が始まって間もなくの放課後、 唐突に俺はトモくんに話しかけた。 「先輩、覚えてますか?昔よく遊んでもらった、ヒロの同級生の……、ヒロは元気ですか。」 トモくんは、当時同級生だったヒロの兄貴。 進級するのと同じタイミングで、 引っ越しにより校区変更になったヒロ、 トモくんは卒業まで転校しない選択だった。 だから同じ学校に居る。 「元気だぜ。お前らとはよくプロレスやったよな!しかしお前、まだ小っせぇな!」 「先輩がでかすぎるんですよ!」 「まだまだ女子みたいだなー、生えてんのか?笑」 「俺ももう一人前すよ!色々と!笑」 「ふーん、まぁ近々遊びに来いよ。俺の部屋もあるし、ヒロも会いたがってたからな」 「いいんすか?また、かくれんぼしますか?笑」 「もっといい遊び教えてやるよ!じゃあ、土曜日夕方でいいか?」 「はい!」 トモくんとの3年ぶりの会話。 その口ぶりから、 俺を目覚めさせたあの事は、 忘れていないと確信した。 俺はそれだけで、熱くなった。 土曜日夕方。 トモくんの家に到着。 相変わらず、両親は共働き。 変わったのは、生活臭漂う小さな団地から、 新築の一軒家に引っ越しした事。 ヒロは部活が遅くなり会えずじまい。 好都合だ。 「先輩、あの頃みたくトモくんって呼んでいいすか?学校じゃないし……」 俺は甘えた声と表情を作ってみた。 「いいぜ」 トモくんは新しい家の中を案内したり、 ゲームや服、雑誌など、 俺より少し上の情報をくれる。 打って変わった俺の不満そうな表情を読み取ったのか、 「かくれんぼするか?それともプロレスか?」 迷った。 どっちがトモくんを試せるだろう? どっちがトモくんを感じられるだろう? 「プロレス」 流石に2人でかくれんぼはない。 「じゃあ脱げ!パンツ一丁!」 「えっ!?」 「プロレスラーみんなパンツだろ?嫌か?俺は先輩……」 「はい!」 部活ノリだ。 ボクサーブリーフの2人。 俺はもうトモくんの一部にしか眼中にない。 あの時と同じように、 俺は訳の分からない技を試され続ける。 一体何の技の時かわからないが、 トモくんの一部が、眼前にやってきた。 触れるか触れないかの距離、 俺と僕の初めての憧れが、 薄い布地一枚隔てた向こうにある。 俺は、技を食らって悶絶したフリをして、 思いっきり鼻から深呼吸した。 「お前!匂い嗅いだろ!」 「嗅いでないすよ!苦しかったから息荒くなっちゃって」 「じゃあ、次の技な」 トモくんは押し付け始めた。 俺の鼻先に、力強く、時に優しく。 繰り返される動きに合わせ、 トモくんの昂りも始まった。 上下左右と動かすたびに、 わかりやすく、熱を持つ。 「トモくん……やばいよ……」 「何が?俺は気分いいぜ」 加えて、円を描くような腰使いまで。 遂に、トモくんの昂りは最大限に。 先端が顔を出し、俺の口元に当たる。 「トモくん、出てるし!」 「何も言うな、そのまま……いいか?」 やっぱりそうだった。 「先輩命令なら……」 俺は再び声色を作る。 「初めてじゃないよな?」 「初めて……」 嘘を付いた。 トモくんとは初めてだから、 あながち嘘でもないか。 「俺な、あの時からしたかったんだ」 「僕も……」 トモくんは向きを変え、 お互いを重ね合わせて、 さっきと同じ動きをする。 「トモくん、直接でもいいんだよ」 「いいのか?」 「あの時みたく、暗いところでもいい?」 トモくんは無言で俺を抱きかかえ、 押入れへ。 トモくんにされるがままにした。 やっぱり優しかった。 積まれた布団の上で、若い汗をほとばしらせ、 俺は湧き上がる喘ぎを堪えきれず、 声を出し続けて、果てた。 そして覚えたての口でトモくんの昂りを含み、 俺は終わりの時まで離さなかった。 蒸し暑さと息苦しさの中で、 俺は求め、求められていた事の歓喜を、 僕は念願を達成できた絶頂を、 しばらく感じ続けていた。 「ヤバかったな」 「嬉しかったです」 偽らざる俺と僕の本心だった。 2人で浴室に行き、 トモくんが、体を流している間、 観察した。 薄暗がりでよく見えていなかった、 トモくんの実物は、 俺に火を付けた。 今度は煌々とした明かりの中、 再び俺はトモくんを最後まで離さなかった。 多分最後になる、 そして最高になると、 知っていたから。 蕾から花へ。 俺は咲く事ができる。 花の盛りは間もなく来る、 はずだった…… 最終頁 ⑥苦しみの始まり に続く
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