24人が本棚に入れています
本棚に追加
最終話⑥苦しみの始まり
蕾だった俺は、
花開く事が出来る様になった。
学年が変わり、春が来た。
男も女も多感の始まり、
それは、俺にとって長い苦しみの始まり。
この頃、
男女ともに友達が多かった俺は、
毎日のように、
繰り広げられる、
恋の話題にも積極的だった。
何故なら、
[好き]という感覚、感情、
付き合うというステータス、
その対象は[異性]だったからだ。
少しずつ、
あいつとあいつが一緒に帰ったとか、
誰と誰が付き合ってるとか、
あの2人はもうキスしたとか、
そんな話題が増える。
実際叶えてるそんな連中が羨ましかった。
当時、俺の偽らざる気持ちだった。
好きな子もいた。
好かれる事もあった。
告白したこともあった。
一緒に帰りたいし、
デートに行きたいし。
でも何故かそれから先は、
全く関心が無かった。
周りの連中も、成長を続け、
より深く、よりリアルに、
行為に関する深掘りをする。
俺はそれが、
当たり前、普通、当然、
だとわかってはいた。
俺自身の事を除けば。
次第に、
俺は俺自身に、
違和感を感じてくる。
男女の営みについて、
具体性が増せば増すほど、
俺はそこに何の感情も覚えない。
肉体的に反応することもない。
俺は既に、
簡単に言えば、気持ち良さを、
何度も知っている。
じゃああれは何だったのか?
そういった行為は、
やってはいけない事だった?
頭がおかしいのか?
それとも病気?
同性とそうなるという事は、
俺は男じゃないの?
でも、スカート履いたり、
ブラは付けたくないぞ。
俺は自分を見失っていった。
未だに、
好きになるのは異性、
でも体は同性を求めてる。
簡単に答えを知る術もない時代。
俺は異常だと認識した。
病気ではないけど、
俺は普通の人ではないんだと。
夜になれば、
あの時の事を思い返しながら慰める。
朝になれば、
好きな子の事でいっぱいになる。
俺は次第に、
今まで連んでいた連中から、
距離を置く。
話す事に困るから。
異常な俺を知られたくないから。
ちっぽけな俺のプライドだった。
俺はそういった色恋とは無縁なグループに、
身を置いた。
本来の俺には、
全く興味が湧かない話題のグループに。
そうして、
俺は卒業間近までの時間を、
自分を決め付け、
自分を軽蔑し、
自分を偽り、
孤独の中に身を置いた。
誰かが教えてくれることもない、
どこかに答えが載っているわけでもない、
俺自身が、理解するしかなかった。
俺自身が、身の振り方を決めるしかなかった。
2年近い時間を使い、
俺は周りとは、違う事を理解した。
異常ではない事も理解した。
異性を好きになる事もやめられた。
好きの先に何があるか、
それが俺に出来るのか、
出来ない事を知ったから、やめられた。
でも、同性を好きになる気持ちは、
まだわからない。
それは一旦、置いておく事にした。
それを知るのは当面先の事。
受験シーズン。
苦しみから抜け出す為、
俺は、当初決めていた共学の進学校から、
私立の男子校へと進路を変えた。
結果的にこの選択は、
俺に花の盛りを教えてくれる事になる。
花盛りの頃、俺の夢は、
俺を大人に変えていく。
完 ※次作に続きます
最初のコメントを投稿しよう!