①未熟な目覚め

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①未熟な目覚め

この頃には、気付いていた。 表層を装う俺と、 深層に潜む僕を。 俺の一部を放出するような、 あからさまな欲望とは違う。 でも、 いずれそうなってもいい、 そうなりたいと、 僕は願っていた。 やってはいけないことと、 未熟な僕は知りつつも、 深層に目覚めていった。 性の区別もあやふやな程、 白い肌に華奢な身体。 俺は嫌いだった。 猛々しくありたいと俺は望む反面、 その風貌の落差、 どちらが真なのか、 早く知りたい僕が確かにいた。 僕が好きだった、 褐色の肌に健康的な筋肉。 そうなりたいと思う俺の憧れは、 いつしか違う方へ向かっていった。 思春期に入る少し前、 同級生の2個上の兄貴は、 俺の理想的な人だった。 最高学年だったが、既に身長170、 地黒な肌に、筋肉質な身体。 気は優しくて、力持ち、そんな人。 その同級生の家に行くと、 いつも一緒に遊んでくれた。 かくれんぼやプロレスごっこ、 妙に高鳴り、火照る遊びだった。 名前はトモくん。 いつもジャージ姿。 かくれんぼの時、 見つからないように、 俺に覆い被さり守ってくれた。 押入れに一緒に隠れた時、 暗闇が怖かった俺を、 後ろからずっと抱きしめてくれた。 プロレスごっこの時は、 俺には寝技を優しくかけてくれた。 僕は気になっていた。 そして気付いていた。 俺を守ってくれている時、 俺を抱きしめている時、 俺に寝技をかける時、 ジャージ越しの突起が、 徐々に強度を増していた事に。 ついに確信へ。 その日は、なぜかトモくんと2人きり。 今日は押入れで、 怖い話をすると言う。 真っ暗闇ではなく、薄暗がりの中、 どこかで聞いたような話が続き、 僕は退屈だった。 いつものように、触れ合って、重なり合って、 トモくんの温もりが欲しかった。 だから、俺は怖がるフリをした。 すると、後ろから抱きしめられた。 やっぱりそうだ! 僕が求めたもの、肌が重なる温もり、 そして、温もりの奥にある、 トモくんのあの昂り。 それ以上は要らなかった。 徐々に、 吐息が荒くなり、 俺の白肌を指先でなぞり始めると、 俺は怖くなった。 まだ築かれていない、受け入れる性能。 昂りのその先にある、 トモくんの熱い滾りを、 受け止めるには、 未成熟だった。 それ以来、俺はトモくんを避けた。 僕もまだ間違いだと思っていたから。 3年という時間を過ぎるまで、 僕は待ち続けた。 トモくんを受け入れられる、 その日のまで。
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