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エピソード2
その後も私の質問にピナは真面目に答えなかった。
わたしはこの世界のことも、元の世界に戻る方法も、ピナの正体さえもわからないままだったので、少しずつピナに対していらだちを覚えてきた。と、その時——。
「さあ、分かれ道だよ。君が好きな方を選んで。」
ピナが元気よく左右の分かれ道を指さした。相変わらず霧は深かったが、その奥に階段のようなものが見えた。
「好きな方って言われても、、」
元の世界に戻るためには間違えられない…気がする…ただの私の勘だ。
「あ、忘れてたよ。」
ピナは、ふふっといたずらっぽく笑って、マルの手で器用にペチンと鳴らした。
すると、左の道の前には真新しい黒色のリクルートスーツが浮かんできた。
そして、右の道の前には、キラキラしたピンク色のドレスが浮かんできた。ちょうど、子供の頃憧れていた魔法使いの衣装とそっくりなドレスであった。
「さあ、好きな服の方を選んで、その服がある道の方に進むよ。」
「あ、道じゃなくて服を選ぶのね?」
「うん。もちろん選んだ服は着てもらうよ。」
「えっ、、、どっちか着ないといけないの??」
「うん。さあ、早く選んで。」
わたしは悩んだ結果、スーツを着ることにした。
「それでいいのかい?」
「うん、スーツは好きじゃないけど、、もう大人だから。私にあのドレスは可愛すぎると思うの。」
「そうかい。なら左の道に進もう。」
ピナは、左の道の先にあった階段をマルの足で器用に登って行った。
私も急いでスーツに着替え、ピナの後を追った。
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