エピソード3

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エピソード3

 階段を上った先は、深い霧が晴れていた。が、代わりにたくさんのハートが浮いていた。 「なんで、ハートが浮いてるの??」 「ハートがいっぱいだ~。」  ピナは私を無視して、嬉しそうにハートに駆け寄っていった。  パチン。  ハートは、綺麗にはじけた。 「キラキラだ~。」 「そうね、すごく綺麗だわ。」  ハートが浮いてることは不思議であったが、もはやそんなことは気にならなくなっていた。  それからピナと私は、近くにあるハートをつぶしながら先に進んだ。  パチン、パチン……。音が宙に響く。  ハートがはじける瞬間は、この世のものとは思えないほど綺麗だった。 「そっか、ここはこの世じゃないものね。」  自分で思い直し、笑みがこぼれた。 「どうしたの?」  ピナがサンカクの頭を横に傾けて顔を覗き込んできた。 「ううん、なんでもないわ。それより、さっきの質問の続きをさせて、、私はどうすれば元の世界に戻れるのかしら?」 「ふふっ、それはピナにはわからないや。」 「またそれ?ピナ、あなた本当に案内人なの?」 「もちろん、さあ、次の分かれ道についたよ。」   ピナが指さす先には上に登る階段と、下に降りる階段があった。 「今度は忘れないよ。」  ピナは、先ほどと同じく、マルの手で器用にペチンと鳴らした。と同時に、私は急に涙が止まらなくなった。 「うっ。。なんで……?」 「ハートがはじけたからさ。」  ピナも泣いていた。 「さあ、次の分かれ道を選んで。涙が落ちないように上に行くかい?それとも、そのまま涙を流しながら下に行くかい?」  ピナは泣きながら説明してくれた。  私は、悲しみに暮れながらも選択をした。 「下に行くわ。」
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