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⑤捧げたいあなたに
タケルと結ばれて気付いた。
俺は真っ先に兄ちゃんを思い浮かべた事を。
俺の中にある僕は、
本気で兄ちゃんを欲していた。
残された時間はわずか、
兄ちゃんに捧げる決心がついた。
年が明けた2月
既に部活を引退したタクミくんとは、
受験が迫ったこともあり、
関係はどんどん薄くなった。
たまにすれ違っても、
昔のようにはいかなかった。
もう俺の手には届かない、
大人の階段を登っているようだった。
無事受験を終え進路が決まったタクミくんは、
半年ぶりに部活に顔を出した。
後輩みんなそれぞれが、
タクミくんを囲んで談笑する中、
俺は何故か忘れられてしまう気がした。
悲しかった。
だから思い切って、
2人で遊ぶ約束。
タクミくんの家にした。
「先輩、もうすぐですね」
「だな。東京だしな」
「寂しくないすか?」
「こないだまではな。でも、いざ進路が決まるとヤバいくらい寂しい」
「俺も弟として寂しいけど、兄ちゃんの夢の為、笑顔で送りますよ!」
「あの時以来だな、兄ちゃんって呼ぶの」
「可愛かった弟も、こんな野郎になっちゃいました!笑」
俺は身体的に成長し、
身長は低めだけど、
筋肉質で毛深くなり、
男臭さが出ていた。
「見た目じゃないの!可愛さは」
「まだ可愛い弟ですか?」
「ずっと弟だよ!」
「先輩、弟より彼女作らないの?」
「以外にモテないんだよ!笑 あんまり喋るタイプじゃないからかな。お前となら話せるけど。」
「弟ですから!」
あの出来事を兄ちゃんは、
どう捉えていたのだろう。
多分ノーマルだけど、
俺がまだ可愛らしかったから、
魔が差しただけかな。
今の俺なら拒絶されるかな。
でも僕はそれでもよかった。
俺と僕、
初めて一致した結論だ。
「先輩、俺、もう兄ちゃんって呼ぶのやめるわ」
唐突に言ってみた。
「なんで?離れ離れになるからか?」
「違う。俺…先輩の女になりたい…だから、兄ちゃんじゃダメなんだよ…」
「女って…まぁ言いたいことはわかる」
「ごめん!タクミくんが欲しい。俺のわがままさ」
「俺もお前が欲しい。あれから言い出せずにいたけど、踏み出せなくてさ」
「じゃあ、今日…女にしてくれる?本気のやつだよ!俺初めてだからね!」
「あぁ、俺もずっと想像だけしてたから、覚悟しろよ」
俺はタクミくんの胸に顔を埋め、
あの懐かしい匂いを嗅いだ。
背中に回した腕に力を入れながら、
力を込めて抱きしめた。
タクミくんからは激しい確認、
ビリビリと感電しているかのような、
感度が異常にあった。
あの夜よりも、
紅潮したタクミくんを、
最高潮にした後、
「欲しいか?」
「うん、いっぱい想像したんだよ…先輩と一体になる瞬間」
「俺でいいんだな?」
「タクミじゃなきゃやだ」
俺はタクミくんを初めて呼び捨てにし、
女になりきった。
ゆっくりと、
ぎこちなく、
2人がジリジリと繋がる。
強烈な痛さと、
捧げている嬉しさが、
当時に起こる。
俺は潤ませタクミくんをじっと見つめた。
言葉はもう出なかった。
僕はタクミくんの笑顔に見つめられ、
気を失うほどの幸せを感じた。
「最後は?」
「一緒に出来る?」
「このままで…か?」
「うん、俺…タクミの彼女だよ?」
「愛してる!」
ありきたりな表現の後、
わずかに俺の方が先走り、
間もなく、
タクミくんの一瞬の愛が、
俺の奥深くに押し寄せた。
俺はタクミくんに僕を捧げた。
俺は僕に感謝しました。
これからは、
俺も僕もない。
俺一本で、
俺を生きられる。
目覚めを与え、
気付きを与え、
経験を与えてくれた。
愛も知った。
それが瞬間的な、
継続性のないものだとしても。
俺は俺を初めて好きになれた。
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