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「なんで?オレが持ってるのに?ってところですか。結構あなたも顔に出るタイプですね。いや、普段出ないとしても、さすがに驚愕か。全くのノーマークだったんですね」
探偵モノなら真相を暴いてみせたかの決め場面だろうに、相変わらず淡々と言いやがる。勝手に決めんなと言い返したかったが、
「なんで」
オレはそれが一番知りたかった。
「これはシナリオです」
弟がテーブルにノートを広げてみせる。山橋の手書きの文字がページを埋めていた。
「兄はシナリオを書いて、別のノートに漫画形式で下書きをしていたようです」
知らなかった。見たことなかったから、漫画形式で描いたネームしかないものと思い込んでいた。
「一つの作品に二冊あるノートが、これだけ一冊しかありませんでした。まだ、シナリオしかできていなかったのかとも考えたんですが。なんとなく、聞いたことのあるようなタイトルで、タイムスリップする話の内容も、なんとなく読んだことがあるように思えて、漫画好きな友人に聞いてみたんです。すぐに思い出して貸してくれましたよ。比べてみればセリフが同じなのは一目瞭然、しかも作者は兄の友人。問い質したくもなるでしょう。これの漫画形式で描かれたノートは、あなたの手元にあったんじゃないですか」
〝春休みに描いたんだ、感想聞かせて!〟
おぅ、と教室で手渡されたノートを受け取った。
〝これはさ、結構自分でもいいカンジだと思うんだ。正直に意見をもらって、今度こそ出してみようと思って〟
お、ついに。マジか、頑張れ。オレは、好きな漫画のキャラや似顔絵なんかの絵は描けたけど、あいつほど想像力は豊かじゃなかった。だから。
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