後でしか悔やめない

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 比べてみれば一目瞭然――ほとんど下書きのまま描いたんだから当たり前だ。あぁちくしょう、なんでオレ、まんまで、タイトルも変えずに。ストーリーはそのままにしても、タイトルくらい変えれば――いや、でも、ほかのタイトルなんて。あれがピッタリだったし。主人公が、大好きな彼女に告白が成功するまで何度もタイムスリップしてやり直すんだ。ダメだったところを反省して、明日こそはゼッタイ、ってOKをもらうその時を待ちきれなくて、っていう――やり直しができるんだったら、オレだって戻りてぇよちくしょう、なんでこんなことに。  このノートは保管しておきます。ちゃっかり釘さしていきやがったよな。騒ぎ立てる気がないなんて言われたって、今はそうでも、後から脅してきたり、そうだよ、今の連載実写化したら、逆恨みされて嫌がらせされたりするかもじゃん。ヤバい、オレは足元にポカリと開いた黒い穴に落っこちた。  あいつも言ってたよな、そりゃ決め手になる証拠なんかもうない。打ち切りになったしノートは捨ててしまった。シナリオは残す、といっても、決定的なのはネームのノートの方だ、確かにそうだ。シナリオだけなら、オレも協力したんだって言えなくもないじゃないか。だけど、騒ぎになったらそれだけでヤバいだろ。実写化、流れるんじゃないのか――せっかくのチャンスが、フイになる――落ちた穴に底はない。ひたすら焦りに苛まれる。
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