25.襲撃、そして――

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25.襲撃、そして――

 そんなことが起きていたとは知らず、わたしは勤め先からの帰り道の途中にあった。  近頃は残業はほとんどなく、ほぼ定時に帰れている。    逆泉商店街のフリーペーパー作りにわたしが一枚噛んでいることは、勤め先の人たちの知るところとなって久しい。  そのおかげか、最近は業務の負担がちょっとだけ減り、代わりに全然違う部署の広報担当の手伝いをすることになるなど、おかしなことが起こりつつある。    ちなみに、逆泉商店街については勤め先でも『店構えは汚く、量は多いだけが取り柄のまずい料理を出す中華屋』ばかりが有名で、他の店を知っている人がほとんどいない状態だった。  フリーペーパーを読んで他の店について知り、試しに行ってみたら気に入ったのでリピーターになったという声も耳にして、誇らしい気持ちになった。    最寄り駅に着き、改札で定期券をかざそうとしたところで、端末に数十件もの着信通知が入っていたことに気付いた。  そのほとんどが柴本からだった。  その中には通話着信だけじゃなくて、メッセージアプリで送られたものもあった。   《今どこにいる?》 《まだ勤め先か?》 《今いる場所から動くな》  そんなメッセージが通話着信のところどころに挟まるように入っている。    なんだこれ?  一体何のつもりなのかと、柴本に通話しようとしたところで   「キャーッ!」  後ろの方で悲鳴。続いて何かの怒鳴り声。何かがぶつかり合うような音。    振り返る。  いつもと変わらない風景。  駅のホームには家路に急ぐ人の群れ――。  。  。  。  。  。    逃げなきゃ。ああ、でも間に合わない。  反射的に目をつぶる。そして衝撃が――いつまでたっても来ない。  おそるおそる目を開けると、そこには 「よう。おかえり」  突進してきた男を組み伏せ、足で踏みつける柴本がいた。  刃物――よく研がれた洋包丁は、床の上に転がっている。
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